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PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015

2015年05月15日号

会期:2015/03/07~2015/05/10

河原町塩小路周辺[京都府]

京都駅近くの崇仁地区に展開された、ヘフナー/ザックス《Suujin Park》。フェンスで囲われた空き地が連なる異様な一帯の中に、廃棄された資材でつくられた公園が突如として出現する。フェンスと同じ素材で建てられた仮設の鳥居が異空間への入り口を示す。誘われるままに入り組んだ路地を進むと、取り壊された家屋の廃材で組み立てられた遊具のような建築物が出迎える。植物のプランターが無数にぶら下がる。バーベキューセットも置かれている。巨大な日時計もある。カラフルな三角旗が風にはためき、サーカスのような祝祭性と仮設性を強調する。
公園や広場を想起させるこれらの空間は、公共性へと開かれているようで、一方ではフェンスで囲われ、立入禁止の私有地であることを示す。この奇妙な矛盾が、開放的で楽しげな場に緊張感をもたらす。更地となった空間は、排除や均質化の暴力が背後にあることを匂わせる。権力や資本の介入に、ブリコラージュ的な手法で、打ち棄てられた素材や廃品を用いて抗うこと。ヘフナー/ザックスの《Suujin Park》は、祝祭的空間へと場を再構築しつつ、「場」に対する批評性を展開している。ひとつには、長く差別を被ってきたこの地区の歴史という具体的な場に対して。そしてもうひとつには、「国際展」という文脈に対して。
3つの歌が重なり合うサウンドインスタレーションを鴨川デルタに展開したスーザン・フィリップス、帝冠様式で建てられた京都市美術館の地下に、占領期の米軍による接収を示す資料を展示し、美術館の歴史を帝国主義や日本の戦後史と関連させて示したアーカイブ。これらと同様に、《Suujin Park》もまた、観光地としての消費対象である「京都」を再確認するのではなく、場のはらんだ重層的な歴史を批評的に掘り起こす試みであった。均質化、消費化されていく国際展へのアンチテーゼとしてこれらを提示した点で、PARASOPHIAの開催は評価できるだろう。


会場風景

2015/04/05(日)(高嶋慈)

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