2017年11月15日号
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artscapeレビュー

西山裕希子「You」

2015年05月15日号

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会期:2015/03/28~2015/04/12

Gallery PARC[京都府]

西山裕希子はこれまで、ロウケツ染めの技法を用いて、主に女性像や、女性像と組紐などの紋様を組み合わせた平面作品を発表してきた。今回の個展では、染織をベースにしつつ、「うつす」行為や「トレース」がはらむズレへと作家の関心が移ってきたことが伺える。
この関心の変化は、元々、ロウケツ染めの技法に内在していたものだ。ロウケツ染めでは、「うつす」「なぞる」プロセスが幾重にも介在する。まず下絵をトレーシングペーパーになぞり、布に線をうつし、線の周りをロウでなぞり、ロウとロウの隙間に染料を染み込ませることで、残された隙間が線として顕在化する。こうした何重もの「うつす」プロセスを経ることで、元々の線は微細なズレをはらんでいく。
今回の個展では、ロウケツ染めの平面作品に加えて、銀塩写真をガラスにプリントした作品や、鏡やガラスの映り込みを利用したインスタレーションが展示されている。また、絵画の起源として有名な「恋人の影を壁になぞる女性」の図像を文字通りトレースしたドローイングもある。特に、写真をガラスにプリントした作品では、銀を含んだエマルジョンをガラスに塗って像を定着させる際にズレが生じ、像にわずかな歪みをもたらす。被写体はいずれも光が差し込む窓辺であり、それ自体が透明なガラスにプリントされ、透過光の差し込むガラス壁に置かれることで、天気や時間帯によってさまざまな陰翳の表情を見せ、美しい。
線のトレース、「うつす」行為がもたらすズレ、オリジナルからの距離の増幅、映像を生み出す光源としての光、光の痕跡としての写真、ガラスや鏡への映り込み、反射や鏡像……「うつす」を軸に多様な試みが展開され、インスタレーション空間の中で文字通り乱反射のように響き合う個展だった。過渡的ではあるが、それぞれの分岐が今後、どう展開されていくのかが楽しみである。

2015/04/12(日)(高嶋慈)

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