2018年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2016年05月15日号のレビュー/プレビュー

森村泰昌:自画像の美術史──「私」と「わたし」が出会うとき

会期:2016/04/05~2016/06/19

国立国際美術館[大阪府]

もともとセルフィー的な作品をつくるアーティストだが、今回はまさに美術史における自画像をテーマとし、さらに私色が強い大個展になっていた。驚いたのは、2016年と記された新作が続々登場すること。3カ月間での多産ぶりがうかがえる。ハイライトは自画像を描いた作家たちのシンポジウムを想定した映像作品。物語的なわかりやすい美術の解説だが、絵をとらえる視点は筆者とだいぶ違う。

2016/04/05(火)(五十嵐太郎)

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田中一光ポスター展

会期:2016/04/05~2016/06/19

国立国際美術館[大阪府]

展示では、1955年から2000年までの約50枚のポスターをずらりと並べる。仕事はオリンピックや企業文化との関係が目立つ。彼のデザインは、情緒的ではないモダンと和の邂逅が特徴だろう。同世代の日本人建築家も同じテーマを追求していたが、これが海外にアピールする武器にもなっていた。

2016/04/05(火)(五十嵐太郎)

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第1回日本建築設計学会賞作品展+公開審査会

会期:2016/04/02~2016/04/10

ASJ UMEDA CELL 梅田阪急ビルオフィスタワー24F[大阪府]

梅田阪急のASJにて、第一回日本建築設計学会賞の公開審査会が行なわれた。現地審査を経て選ばれた6組のファイナリスト、桑原賢典、松岡聡+田村裕希、河井敏明、島田陽、アルファヴィル、平田晃久らが模型や図面をインスタレーション的に展示する。まずはそれを囲んで建築家の説明と質疑。審査員は、竹山聖、古谷誠章、倉方俊輔、五十嵐の4名である。続いてパワーポイントによって、それぞれの建築の思想をプレゼンテーションしてから審査の最終討議となった。第一回ということもあり、事前に打ち合わせなどはなく、その場でやり方を模索しながら審査が進められた。最終的にいろいろな視点からその面白さを解釈できる、島田陽の石切の住居に絞られ、単純な投票ではなく、議論によって大賞が決まる。ビエンナーレ形式で、次回の設計学会賞は2年後になるらしい。

写真:左上から、桑原賢典、松岡聡+田村裕希、河井敏明 右上から、島田陽《石切の住居》、アルファヴィル、平田晃久

2016/04/05(火)(五十嵐太郎)

「グラシエラ・イトゥルビデ 1969-1990年」

会期:2016/04/02~2016/05/14

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム[東京都]

グラシエラ・イトゥルビデはメキシコを代表する女性写真家。1942年にメキシコシティに生まれ、メキシコ国立自治大学映画科を卒業後、マヌエル・アルバレス・ブラボのような先人の影響を取り入れつつ、土着のインディオの文化と暮らしの細部を記録・表現していく、独自の「フォト・エッセイ」のスタイルを確立した。特徴的なのは、代表作の『フチタン、女達の街(Juchitán de Las Mujeres)』(1989)のように、太古の母系社会につながるような女性への視点を積極的に取り入れていることで、フェミニズム的なドキュメンタリー写真の先駆としても位置づけられている。
今回のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムでの個展は、1969~90年に撮影された写真の、ヴィンテージ・プリント19点によるもので、作品自体が貴重であるだけでなく、彼女の眼差しのあり方がストレートに伝わってくる選択・構成になっていた。メキシコの女性たちは、マチスモ(男性優位主義)が色濃い社会のなかで、逞しく生き抜いており、イトゥルビデも彼女たちの生命力を礼賛する、力強い画面構成の写真を撮影している。だが一方で、大地に一人佇むような孤独感、寂寥感を強調する写真もあり、被写体が発する感情の幅が大きく取り込まれている。
1990年に東川賞海外作家賞を受賞するなど、これまでも国内での作品発表の実績を積み上げており、そろそろ美術館クラスの大規模展が実現してもよい作家のひとりと言える。本展の開催がその呼び水になることを期待したい。

© Graciela Iturbide / Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

2016/04/06(水)(飯沢耕太郎)

「MACK CONCEPT TOKYO」

会期:2016/04/05~2016/04/23

IMA CONCEPT STORE[東京都]

MACKは元Steidlにいたマイケル・マックが2011年にロンドンで立ち上げた写真集専門の出版社。設立から5年あまりを経て、ルイジ・ギッリやアレック・ソスをはじめとする高クオリティの写真集を年間20冊というハイペースで刊行して、世界中の写真関係者の注目を集めている。そのMACKから、昨年刊行の川田喜久治『The Last Cosmology』に続いて、日本人写真家3人の写真集が出版されることになった。深瀬昌久の『HIBI』、ホンマタカシの『THE NARCISSISTIC CITY』、細倉真弓の『Transparency is the mystery』である。そのお披露目を兼ねて開催されたのが本展であり、同会場ではこれまで刊行されたMACKの出版物も展示・即売されていた。
ピンホールカメラで撮影された都市の景観で構成したホンマの『THE NARCISSISTIC CITY』や、ヌードと鉱物の結晶の写真を交互に見せる細倉の『Transparency is the mystery』も悪くないが、なんと言っても見逃せないのは、深瀬昌久自身が構成した最後の個展となった「私景’92」(銀座ニコンサロン)で展示された、111点の連作「ヒビ」を1冊にまとめた写真集『HIBI』である。自己追求の果てに袋小路に落ち込んだ写真家の絶望的な心境を、胸を抉るようなユーモアでまぶしたこのシリーズは、個展以後まったく公開されることがなかったので、その全貌が姿を現わしたことは驚き以外のなにものでもない。深瀬が写真を通じて何を見ようとしていたのか、その最終的な答えのひとつがここにあるのではないだろうか。
MACKはこれ以降も日本の写真家たちを積極的にフォローしていくようだ。どんな写真集が出てくるのかとても楽しみだ。

2016/04/06(水)(飯沢耕太郎)

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