artscapeレビュー

Ren Hang「NEW LOVE」

2015年08月15日号

会期:2015/06/19~2015/07/25

matchbaco[東京都]

1987年中国・吉林省生まれのRen Hang(任航/レン・ハン)は、北京を拠点に活動している現代写真家。最近はパリ、ニューヨーク、ウィーンなどでも展覧会を開催し、注目度が急速に上がってきている。今回の新宿のギャラリー、matchbacoでの展示が、日本では最初の個展になる。
「NEW LOVE」は、ニューヨークで撮り下された新作だが、Ren Hangの作品を特徴づけるヴィヴィッドな色彩感覚と、ヌードの男女が絡み合う、あっけらかんとしたエロスの表現は健在である。特に男女が野外で彫刻のようにポーズをとる、身体のフォルムを強調した作品群の面白さが際立っており、思わず笑ってしまうような楽しい写真に仕上がっていた。よくライアン・マッギンレーと比較されるようだが、彼の写真には、アメリカやヨーロッパの写真家にはない、中国人(アジア人)の微妙な身体感覚が投影されているように感じる。中国ではごく最近まで写真による裸体表現はタブーになっており、作品を公表するにあたっては、裸が「自然な、ありのままの」あり方である欧米諸国とは比較にならないような、プレッシャーがあったはずだ。それを乗り超え、突き抜けていくことで得られる解放感が、ポジティブなエネルギーとしてあふれ出ている。日本の若い写真家たちにも、これくらいのびやかな身体表現を期待したいのだが、最近なかなかそういう作品に出会えないのが残念だ。
なお、写真展にあわせて同名の写真集も刊行された。今回はニューヨークの写真だけだったが、北京で撮影されたより過激で過剰な作品群も、ぜひもう一回り大きな会場で見てみたいものだ。

2015/07/08(水)(飯沢耕太郎)

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