2019年12月01日号
次回12月16日更新予定

artscapeレビュー

蔡國強:帰去来

2015年08月15日号

会期:2015/07/11~2015/10/18

横浜美術館[神奈川県]

ニューヨークに移住して20年、久しぶりに日本で個展を開く心境を「帰去来」というタイトルに込めたという。作品は全部で10点。たった10点というなかれ、1点1点が大きく、最後の《壁撞き》なんか企画展示室をブチ抜きで丸ごと使ってる。まず最初の部屋は《人生四季》という4点の連作。支持体に火薬をまき爆発させて描いたものだが、なにやら妖しげな雰囲気。それもそのはず、月岡雪鼎の春画《四季画巻》にインスピレーションを得たものだそうだ。春画には厄除けの効能があるとされており、なぜか雪鼎の春画は火除けとして重宝したらしいが、蔡さんはそのことを知って火をつけたんだろうか。大作《壁撞き》は、99匹の狼が次々と跳躍し、ガラスの壁にぶつかっては再び跳躍を繰り返すという寓話的な情景をフリーズさせたようなインスタレーション。99という数字は道教では永遠の循環を象徴するらしい。ガラスの壁は「見えざる壁」で、ベルリンの壁と同じ高さに設定してある。2006年にベルリンで初公開され、現在はドイツ銀行のコレクション。ちなみに狼はリアルに再現されているけど剥製ではなく、羊毛でつくられたフィギュアというところが蔡さんらしい。エントランス正面の半円筒形のホールには8×24メートルの超巨大な火薬絵画を展示。これは6月にこの場所で制作した《夜桜》で、桜の花の繊細ではかない美しさを一瞬の爆発で表現したもの。それにしても火薬絵画は瞬発性や偶然性を楽しむことはできるが、長時間の鑑賞に耐えるものではない。だからズドーンと重いわりにすぐ見終わってしまう。無理を承知でいえば、もっと《文化大混浴》とか《農民ダ・ヴィンチ》とか持ちネタはたくさんあるんだから、全館使って多彩な蔡ワールドを展開してほしかった。

2015/07/10(金)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00031456.json l 10113479

2015年08月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ