2019年08月01日号
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artscapeレビュー

伝説の洋画家たち 二科100年展

2015年08月15日号

会期:2015/07/18~2015/09/06

東京都美術館[東京都]

1914年に第1回が開かれた二科展の100回目を記念し、約1世紀の歩みを振り返る展覧会。毎年1回開いてりゃ今年102回目だけど、戦争で2回お休みしたからね。いやー二科といってバカにしちゃあいけませんなあ。とくに戦前期のなんと自由で生き生きとしたこと。第1回展の二科賞を受賞した十亀広太郎の《顔》なんか補色を大胆に使ってるし、第2回に首を吊った老人、第3回に行き倒れを描いた石井鶴三も暗いテーマにもかかわらず二科賞を受けている。その後もキュビスムと未来派を折衷させたような東郷青児をはじめ、萬鉄五郎、岸田劉生、小出楢重、古賀春江、神原泰、佐伯祐三らによる清新な作品が続く。思わず足を止めたのは、34年の第21回に出品された藤田嗣治、宮本三郎、向井潤吉の作品の前。この3人、ご存知のように後に戦争画のスターになる画家たちだが、その3人をひとつのコーナーに囲い込んで見せるというのもなんか意図的だなあ。なかでも森のなかで角突き合わせる動物を描いた向井の《争へる鹿》は、密林のなかを行軍する日本兵を捉えた《マユ山壁を衝く》を彷彿させるものがある。軍靴の近づく30年代末からは松本竣介や、前衛の集まる九室会の吉原治良や桂ゆきらが出品を重ね、まだ自由な空気が伝わってくる。それに比べて敗戦後はどうだろう。わずかに北川民次と岡本太郎が気を吐いてるくらいで、そのふたりもマンネリに陥っていく。美術界をリードした戦前に比して、戦後の二科の弱体化は数字にも明らかだ。全132点のうち、戦前(戦中)30年間の作品が118点を占めるのに対し、戦後70年間の作品はわずか14点。もっとも新しい作品は北川民次の70年の作品で、それ以後45年間は1点も出ていない。このような戦後の美術界への影響力の低下に反比例して、ハデな前夜祭や仮装行列で展覧会を盛り上げたり、芸能人やスポーツ選手の作品を入選させてマスコミを騒がせたりするようになる。作品とは関係ないところで話題を提供するしか生き残れなくなったようだ。いっそ続編として、70年代以降の芸能人だけの作品を集めた展覧会を企画したらどうだろう。

2015/07/23(木)(村田真)

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