2019年06月15日号
次回7月1日更新予定

artscapeレビュー

木村友紀「THUS AND SO RATHER THAN OTHERWISE」

2015年08月15日号

会期:2015/07/04~2015/08/01

タカ・イシイギャラリー東京[東京都]

清澄白河から北参道に移転したタカ・イシイギャラリーで開催された木村友紀の展示について、会場に置いてあった解説シートに以下のように記されていた。やや長いが、作品の内容をとても正確に伝えているので引用しておくことにしよう。
「天井から床まで垂れたスクリーンには、引き延ばされたテニスコートのイメージがプリントされている。それが4枚あり、3カ所に分けて掛けられている。大中小に額装された写真は、3段に積み重ねて馬脚の上に置かれている。それらの写真はどれも同じで、階段が写っている。白いペデスタルの上の大理石の台には、大小同じ銘柄の飲みかけのテキーラが置かれている。そのボトルとボトルの間に、ハーフミラーが置かれている。床に置かれたアタッシュケースの中から、蛇腹状のパネルが垂直に伸びていて、それに小さい写真が置かれている。それが2つある。」
説明が一切ないので、観客は木村の展示意図を推し量るしかない。「テニスコートのイメージ」、「階段が写っている」写真、「小さな写真」などはいかにも意味ありげで、木村はそこに写っている視覚的な体験を、拡大・増幅・変換して伝達しようとしているように見える。だが、それらの写真が木村自身の撮影によるものではなく、「ファウンド・フォト」であることを知ると、より混乱が大きくなるだろう。にもかかわらず、作品全体から受ける印象はあまり違和感がなく、どちらかといえば心地よい。名も知らぬ他者の経験が、自分自身のそれと重なるような普遍性を持ち始めるのだ。それは何とも奇妙な、夢と覚醒の間に宙づりになってしまうような気分をもたらす。
タカ・イシイギャラリーでの木村の個展は、今回で7回目になるそうだ。彼女の作品は癖になる。そのインスタレーションは洗練の度を加え、真似のできない領域に入りつつある。もう少し大きな会場で、近作をまとめて見てみたい。

2015/07/15(水)(飯沢耕太郎)

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