2019年06月15日号
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artscapeレビュー

Nerhol「01」「01 Scape」

2015年08月15日号

会期:2015/07/11~2015/08/29

YKG Gallery/G/P GALLERY[東京都]

写真とグラフィックデザインの領域が最も近づいたのは、1920~30年代だったのではないだろうか。バウハウスのラースロー・モホイ=ナジの『絵画・写真・映画』(1925年)などを見ると、フォトグラム、フォト・モンタージュ、そして文字・記号と写真とを組み合わせるティポ・フォトなどの新たな技法が、写真家とデザイナー(両方を兼ねる場合もある)の相互交流によって生み出されていったことがわかる。小型カメラの登場やグラフマガジンの興隆など、同時代の視覚世界の急速な拡張が、果敢な造形の実験に結びついていったのだ。
その意味では、1990年代以降のデジタル化の進行は、20~30年代の状況と重なりあって見えてくる所がある。インターネットとスマートフォンの時代における視覚表現も、写真とグラフィックデザインと境界領域を溶解、浸食しつつあるのではないだろうか。Nerhol(田中義久+飯田龍太)の作品を見ていると、彼らとモホイ=ナジやマン・レイを比較したくなってくる。今回の作品は、ある一日にインターネットに上がった画像を紙に印刷し、厚く重ねて、「0」と「1」という数字の形が浮かび上がるようにカッターで彫り込んでいったものだ。東京・六本木に新たに開設したYKG Galleryでは、その「写真彫刻」の実物が、恵比寿のG/P GALLERYではその一部を拡大して撮影した写真作品が展示されていた。
現代社会の断面図を指標化して提示しようとする意欲的な試みではあるが、それが「写真の可能性をラディカルに拡張」した「クリティカリティの冒険」(後藤繁雄)であるかどうかについては、判断を保留しておきたい。モホイ=ナジやマン・レイの作品は、まさに世界の眺めを更新するような「ラディカル」な試みであったわけだが、Nerholの二人の作品がグラフィカルなセンスのよさと、手業の極致という段階に留まるのか、そうでないのか、まだ確信が持てないのだ。
YKG Gallery:2015年7月11日~8月29日
G/P GALLERY:2015年7月11日~8月9日

2015/07/16(木)(飯沢耕太郎)

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