artscapeレビュー

プレビュー:PACIFIKMELTINGPOT

2015年08月15日号

会期:2015/09/22~2015/09/23

Art Theater dB KOBE[兵庫県]

フランス人振付家、レジーヌ・ショピノのカンパニーをハブにして、太平洋諸地域のアーティストや研究者が展開する《PACIFIKMELTINGPOT》。ショピノの基本的な関心は「口承文化」にあり、声を通した伝達が時間や空間性、身体性と切り離せないことを、コンテンポラリー・ダンスの本質に通じるものとして捉えている。ニューカレドニアやニュージーランドの先住民であるカナックやマオリなど、口承文化をまだ受け継いでいる人々とワークショップを行ない、太平洋地域の口承文化に関するリサーチを行なってきた。2013年には大阪のアートエリアB1で、「PACIFIKMELTINGPOT / In Situ Osaka」ライブパフォーマンス&ディスカッションを開催し、日本、ニューカレドニア、ニュージーランドという3つの地域のアーティストが参加した。
私は一昨年、この大阪でのパフォーマンスを実見したが、基本的には、それぞれの文化圏ごとに3グループに分かれてのショーイングという形式だった。体格差や肌の色、バネや跳躍力など身体そのものの強度、アカペラの力強い歌唱や身体の動きと一体化した音楽のリズムなど、それぞれの文化圏ごとに提示された身体性の差異は分かりやすく、とても魅力的だったが、反面、こうしたプレゼンテーションの仕方は多文化主義的な予定調和に陥りがちでもある。「多様性や差異を認め合って尊重しよう」という確認作業に落ち着いてしまいかねないのだ。
「PACIFIKMELTINGPOT / In Situ Osaka 2013」の完結編となる今回の上演では、大阪大学と城崎国際アートセンターにて、計約3週間の滞在制作が予定されている。滞在制作期間が1週間であった前回に比べると、充実したスケジュールだ。既にある「共同体」の内部に留まったまま、確認・抽出して並置するという提示方法から、身体的対話の継続とさらなる深化によって、より「メルティングポット」な状況が生まれるかに期待したい。
また、沖縄を拠点に活躍する映像作家・山城知佳子と映画監督・砂川敦志が、前回の「PACIFIKMELTINGPOT / In Situ Osaka 2013」のリサーチワークや上演の様子を撮影したドキュメンタリー映画の上映も予定されている。こちらはArt Theater dB KOBEの近くにある神戸映画資料館にて、同日程の午前中に上映されるので、合わせて鑑賞したい。

2015/07/31(金)(高嶋慈)

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