artscapeレビュー

2017年04月15日号のレビュー/プレビュー

VOCA展2017 現代美術の展望─新しい平面の作家たち

会期:2017/03/11~2017/03/30

上野の森美術館[東京都]

絵画中心の展覧会だが、今回は絵画からちょっと外れた作品に見るべきものが多かった。例えば益永梢子は、平坦に彩色したキャンバスを切り取って丸めて6個の透明のアクリルボックスに詰め込み、アクリルの表面にも彩色したりドローイングしたりしている。絵画の断片の集積であると同時に、それ自体が絵画としても成立している。東畠孝子は壁に木材を組んで棚をつくり、そこに本(古本、画集、アルバム、楽譜など)を並べ、観客が自由に手にとって読めるようにした。これも1冊1冊の本が平面の積み重ねであると同時に、本棚全体がひとつの絵画として見られるのだ。
写真を使った作品では、加納俊輔、Nerhol、村上華子の試みが、いずれも既知のシリーズではあるけれど斬新だ。特にNerholの作品は、連続撮影した200枚のポートレートを重ねてカッターで彫り込んだ6点セット。写されたモデルは同一人物なのに、それぞれ表情が異なって見えるだけでなく、そこには(撮影)時間の推移も刻まれている。また、これも平面の集積であると同時に、レリーフ作品としても捉えることができる。今回いちばん感心したのは、ごちゃごちゃした猥雑な都市風景を白黒で描き、一部分をくりぬいてそこからカラー映像を見せた照沼敦朗の作品だ。描写の密度といい、孤高の世界観といい、ずば抜けている。これに比べれば、VOCA賞の幸田千衣の「風景画」は薄い。どうしたんだろう。テーマ自体が絵具を塗る行為と共振しているように感じられた以前の「水浴図」と比べても、退行してないか。

2017/03/16(木)(村田真)

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日本・デンマーク外交関係樹立150周年記念 スケーエン:デンマークの芸術家村

会期:2017/02/10~2017/05/28

国立西洋美術館[東京都]

Skagenと書いて「スケーエン」と読むそうだ。デンマークの北部にある漁村で、ここに19世紀末から20世紀初頭にかけて画家や詩人、作曲家が集まり、国際的な芸術家村として知られたという。そのスケーエンに集った画家たちによる59点の作品が紹介されている。ま、はっきりいってド田舎だけに、農村リアリズムっていうんでしょうか、ジュール・ブルトンやバスティアン・ルパージュ風の写実的な風景画ばかり。しかも北方に位置するため光を渇望するせいか、白を多用するのが特徴だ。さわやかだけど、それだけ。だいたいヨーロッパもアメリカも日本も、時代を問わず、田舎に行くほどリアリズムが尊ばれるのはなぜだろう。なにか普遍的な法則があるのかもしれない。

2017/03/16(木)(村田真)

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シャセリオー展 19世紀フランス・ロマン主義の異才

会期:2017/02/28~2017/05/28

国立西洋美術館[東京都]

西洋美術館はある時代のトップではなく、2番手3番手に焦点を当てるのがうまい。クロード・ロランがそうだったし、ラ・トゥールもホドラーもクラーナハもそうだ。シャセリオーもまさに2番手3番手の代表格(?)。彼の絵をひとことで形容するなら、新古典主義とロマン主義と象徴主義を足して3で割ったような。も少し近づいていうと、新古典主義やロマン主義からは2歩遅れ、象徴主義からは1歩先んじていたような。彼はアングル門下で古典主義を学び、ロマン主義に転じたものの、わずか37歳で死去。ラファエロ、カラヴァッジョ、ゴッホ、モディリアーニらと同じく早逝の画家だ。おもしろいのは、なんかギュスターヴ・モローに似た絵があるなと思ったら、その隣に本物のモロー作品があったりして、シャセリオーがモローに似ているのではなく、モローがシャセリオーに似ていることがわかるのだ。もう少し長生きしたら、さらにどのような展開が待っていただろう。

2017/03/16(木)(村田真)

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北海道卒業設計合同講評会2017

会期:2017/03/16

北海道大学 遠友学舎[北海道]

北海道卒業設計合同講評会2017の審査を、五十嵐淳、島田陽、増田信吾と行なう。総数が多くないので、参加者全員が、3分の発表+7分の講評を与えられた贅沢な場だった。審査員と学生が近い場はよい。最終的に八木悠が最優秀に選ばれる。火葬場はよくあるテーマだが、絵も詩もよく、身寄りのない人の施設ゆえに、死者が一人称で語る空間の構想は初めてかもしれない。また、せんだいデザインリーグのエスキス塾でも見た作品だが、駒場寮の経験者としては学生の自治・共同体を考える案を応援するという意味で、個人賞には鳴海舜の京都の大学寮を選ぶ。

2017/03/16(木)(五十嵐太郎)

大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち

会期:2017/03/18~2017/06/18

森アーツセンターギャラリー[東京都]

超一流は少ないけど、一流はけっこう来ている。ホントホルストの生々しい対作品《陽気なヴァイオリン弾き》と《陽気なリュート弾き》、メツーの意味深な《医師の訪問》、ヨルダーンスの過剰すぎる《クレオパトラの饗宴》、テニールス2世の謎めいた《厨房》、フラゴナールとジェラールのちょっとエッチな《盗まれた接吻》、廃墟おたくロベールの《運河のある建築風景》と《ドーリス式神殿の廃墟》、おなじみクラーナハの《林檎の木の下の聖母子》など、物語性があって楽しげで明晰な絵画が多い。それに、なんかずいぶん見やすいなあと思ったら、画面にガラスの張られていない作品が多いことに気づく。ざっと数えると、ガラスの張られている作品は、85点中13点だけ。8割以上はわずらわしいガラスなしで見られるのだ。エルミタージュ美術館の英断、というより窮状がしのばれる。

2017/03/17(金)(村田真)

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