artscapeレビュー

2011年03月15日号のレビュー/プレビュー

TOKYO FRONTLINE

会期:2011/02/17~2011/02/20

3331 Arts Chiyoda[東京都]

リノベーションした小学校を舞台とする、新しいタイプのアートフェアである。
このときだけの展示のみではなく、常時の展示も混ざり、その相乗効果が心地よい。ゆえに、同じ作家があちこちで展示される現象も起きる。今回、二階の屋内体育館に初めて入ったが、ここにも展示ブースが並び、おもしろい空間を体験できる。
ちょうど、せんだいスクール・オブ・デザインのレクチャーにおいて中村政人さんも説明したように、分断されていた隣の公園と小学校をつなぎ、ワイドなアクセスに変えた空間の操作は、思い切り開放的な雰囲気を獲得するのに、うまく機能している。展示作品としては、世界地図、あるいは地球儀レースと、g3/galleryの梶岡俊幸の墨と鉛筆による、黒い絵が印象に残った。

2011/02/18(金)(五十嵐太郎)

現代中国の美術

会期:2011/01/22~2011/03/13

日中友好会館美術館大ホール[東京都]

中国政府主催で5年にいちど開かれる「全国美術展」は、日本でいえば日展とか二科展とか院展とか全部集めて10倍(人口比)にしたものの5年分、くらいの規模と権威がありそうだ。ジャンルは油彩画、中国画、版画、彫刻などに分かれているが、抽象はもちろん、表現主義とかデフォルメした表現とかもなく、どれもこれもリアリズム。とりわけ油彩画はほとんどすべて超絶的ともいえるリアリズム画法で描かれているのが不気味だ。中国の美術教育は写真のように描くことを至上命題としているのだろうか。モチーフは、失われつつある農村風景であったり、近代化する都市生活であったり、ひとことでいえば現代中国の風俗画というとこか。しかもそれが政府や社会への批判にはならず、かといって翼賛的な社会主義リアリズムにも陥らないところがまた現代中国らしい。

2011/02/18(金)(村田真)

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G-tokyo 2011

会期:2011/02/19~2011/02/20

森アーツセンターギャラリー[東京都]

ゼロ年代の世界的なアートバブルの波に乗って急増したアートフェアだが、リーマンショック後も勢いはまだ続いてるのか。森美術館の階下で行なわれるこのアートフェアは、小柳、小山、ミヅマ、シュウゴ、ワコウなど中堅どころ(10年前までは“チビッコ”とも呼ばれた)が15軒集まったもの。ユニークなのは、作品売買は2日間だけにして、展示はその後も1週間(2/21-27)続けること。商売がからむとショバ代が高くつくのかもね。サイド2のピーター・マクドナルド、タロウナスのジョージェ・オズボルトらの作品に出会えたのが収穫。

2011/02/18(金)(村田真)

ニューアドレス、ニューワークス
"New Space, New Works"
荒木経惟「愛の劇場」
「CHINA FOTO」展

オオタファインアーツ/ワコウ・ワークス・オブ・アート/タカイシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム/Zen Foto Gallery[東京都]

六本木の複合商業ビル、ピラミデの2-3階に4軒のギャラリーが一挙オープンした。これはひょっとして数年前、六本木の古いビルにギャラリー数軒を集めた「アート・コンプレックス」と同様、森ビルが再開発を前に仕掛けた文化戦略ではないかと勘ぐったら、はたしてそうでした。森ビルからのプレスリリースによると「森ビル株式会社は、六本木ヒルズ及びピラミデビルに、現代美術を展示・販売するギャラリー5店舗をオープンします」とある。オープンする主語は各ギャラリーではなく、森ビル株式会社なのだ。まあギャラリーとしては、家賃を安くしてもらって(たぶん)美術館やギャラリーの集まる一等地に店を開けるんだから悪い話ではないだろう。ちなみに5店舗というのは、ヒルズ3階のアート&デザインストア内にできたA/Dギャラリーを加えた数で、こちらは奈良美智の版画展でオープン。しかしそのしわよせでストア内の書籍売場がなくなってしまったじゃないか。それもこれも時代なのか、と嘆息するしかない短足おやじであった。

ニューアドレス、ニューワークス@オオタファインアーツ(2011/02/18~2011/04/01)
"New Space, New Works"@ワコウ・ワークス・オブ・アート(2011/02/18~2011/03/26)
荒木経惟「愛の劇場」@タカイシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム(2011/02/18~2011/03/26)
「CHINA FOTO」展@Zen Foto Gallery(2011/02/16~2011/03/30)

2011/02/18(金)(村田真)

菅野由美子 展

会期:2011/02/07~2011/02/26

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

身近にある壷や皿などの器をていねいに描いた絵画の発表も3回目。パンフレットに載っている作者のコメントをぼくなりに意訳すると、器は本来そこになにかを盛るべき道具だが、器自身が自己の存在を主張するためには空っぽでなければならない。つまり空っぽこそが器というものの特質であり、だから器を描くということは空洞を描くことにほかならない……。なにか作者の心も埋めがたい空洞を抱えているのだろうか、とよけいな心配。

2011/02/18(金)(村田真)

2011年03月15日号の
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