artscapeレビュー

2011年03月15日号のレビュー/プレビュー

クワイエット・アテンションズ──彼女からの出発

会期:2011/02/12~2011/05/08

水戸芸術館現代美術ギャラリー[茨城県]

水戸で女性だけの展覧会が開かれてるというので、BankARTスクールの受講生だったステキなおねえさま方と水戸芸へ。しかし水戸芸で女性展といえばチャラチャラした少女系の展覧会と思い込んでいたが、まるで勘違いだった。ちゃんとタイトルと出品作家を吟味すれば、明らかに少女系でなくもう少し大人びた展示であることは予想できたのに。ちなみに出品作家は三田村美土里、土屋信子、ツェ・スーメイら12組で、どっちかといえば沈思黙考型だ。その後、近くの料理屋でアンコウ鍋を囲む。じつはこちらが本日のメインだったかも。はふはふ。

2011/02/19(土)(村田真)

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アーツチャレンジ2011

会期:2011/02/15~2011/02/27

愛知芸術文化センター[愛知県]

ぼくも審査に加わったコンペの入選作品展。といっても、ただ作品だけ見て優劣を競うのではなく、愛知芸術文化センターのどの場所で、どんな作品を見せるかというプランを出してもらい、それで判断するコンペなのだ。しかも美術館やホール以外のフォーラムとか階段踊場とか余った場所が候補地なので、すきま風にも冷たい視線にも耐えられるタフな作品が求められるのだが、期待に反して応募の大半は場所を選ばない従来どおりの絵画か彫刻だった。もっと場所から発想し、その場所でしか見られない作品を考えてほしかったなう。そんななかで私のイチ押しだったのが、11階の展望回廊のガラス窓に人から借りてきたカーテンを吊るそうという金沢寿美のプラン。これはこの場所から発想されたこの場所ならではのオリジナルであると同時に、他人からカーテンを借りることで外の世界ともつながり、また作品そのものも「見る」ことと「隠す」ことについての考察をうながしてもいる。じつに多角的に深読みのできる作品なのだ。勝手に村田真賞。

2011/02/20(日)(村田真)

大西康明「体積の裏側」

会期:2011/02/15~2011/04/17

愛知県美術館[愛知県]

なんていうのか知らないけれど、スーパーで生鮮食品などを入れる袋に使われる吹けば飛ぶような薄い半透明の幕を、天井から黒い糸で吊るして山の表面のように凹凸をつくっている。その下に入ると幕がふわりと動き、下から見上げると山の内部から空を見たような妙な気分になる。大西は2007年の「アーツチャレンジ」(当時は「新進アーティスト発見inあいち」というアカ抜けないタイトルだった)の入選作家。しかし「アーツチャレンジ」の入選作家が数年後に愛知県美術館に取り上げられると、このコンペは美術館への登竜門という誤ったヒエラルキーを生みかねない。「アーツチャレンジ」で発掘される才能は必ずしも「美術館美術」になじむとは限らないからだ。

2011/02/20(日)(村田真)

伊東豊雄事務所設立40周年創立記念パーティ

座・高円寺[東京都]

驚くべきイベントだった。冒頭、伊東豊雄による北島三郎の熱唱に始まり、途中はスタッフによるKARAのダンス、ラストはこれまでの伊東事務所の所員がみなステージに上がり、歌とダンスで大団円のフィナーレを迎える。しかし、メインは三部構成のシンポジウムだった。
第一部は藤森照信が聞き手となって、磯崎新と石山修武の話を引きだしながら、伊東の70年代~80年代をふりかえる。モダニズムに反逆し、なぜ建築が閉じたのか、という質問からスタートし、最後に磯崎は「消費の海に浸らずして新しい建築はない」の論文で、伊東はいまの伊東になったと述べる。
第二部は、転換となる作品、せんだいメディアテークをめぐって。大西若人が現仙台市長の奥山恵美子に、当時の行政サイドの苦労話をきく。続いて、塚本由晴が原広司に、情報の建築について意見をうかがう。第三部は、伊東自身が中沢新一をゲストに迎え、これからの建築について討議を行う。今後、伊東は建築塾を通じて、若い人と新しい世紀の空間を考えると表明したことが印象的だった。

2011/02/21(月)(五十嵐太郎)

軍艦マンション再出航イベント[GUNKAN crossimg]

会期:2011/02/22~2011/02/27

軍艦マンション[東京都]

異形の造形から通称「軍艦マンション」と呼ばれる、渡邊洋治の第三スカイビル/ニュースカイビル(1970年)がリノベーションを経て、再度使われることになった。近年、こうしたイベントは増えているが、
展示という名目で、普段は入れなかったであろう地下、3~5階、屋上を見学することができたので、アートに感謝したい。尋常ではないプランもさることながら、屋上の艦橋を模した給水塔を間近に見ることができ、大いに感銘を受けた。船を建築のメタファーにすることは、横浜郵船歴史博物館において開催中の「船→建築」展が焦点を当てているように、モダニズムの時代から試みられてきたことだが、渡邊の建築もその系譜に位置づけられる。ピエール・パトゥによるパリの船=集合住宅は有名だが、こちらは14階建てだ。ハンス・ホラインは航空母艦都市を空想したが、軍艦マンションは実現されたプロジェクトである。世界に誇るべき、船=建築だ。

2011/02/22(火)(五十嵐太郎)

2011年03月15日号の
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