artscapeレビュー

2012年03月15日号のレビュー/プレビュー

アーツ・チャレンジ2012

会期:2012/02/14~2012/02/26

愛知芸術文化センター[愛知県]

続いて、愛知芸文センターにて、アーツチャレンジ2012を見る。地下2階に大量の安全ピンを並べた土田泰子、書籍の頁を折り、読み取ったイメージを造形化する益永梢子、名古屋の街でのささやかな出来事のニュースを配信するタニシK、屋外階段踊り場の空間に音を鳴らす彫刻を置く嶋田晃士など、さまざまな作品を楽しめる。すべてがホワイトキューブの外側に展示されているので、やはり、個人的には街や美術館の場所をうまく使うタイプの作品が興味深い。

写真:上から、土田泰子、益永梢子、タニシK、嶋田晃士

2012/02/25(土)(五十嵐太郎)

塩賀史子展「光の名残──明滅の庭」

会期:2012/02/22~2012/03/11

ニュートロン東京[東京都]

ウィンドーに藤の花の絵が飾ってあって、一瞬、松井冬子の《世界中の子と友達になれる》かと思った。もっとも松井の絵には藤の花の代わりにハチがびっしり描かれていたが。1階は池の蓮や森林など、2階は椿などの花の絵を展示。写実的だが細密ではなく、ペインタリーなタッチも残している。とくに森林風景は独特の世界観が表われていて薄気味悪いほど。人物を描かせたらどんなんだろう、ちょっと見てみたい気がする。

2012/02/25(土)(村田真)

鮫島ゆい展「Tangent point 0」

会期:2012/02/22~2012/03/11

ニュートロン東京[東京都]

青い空に黒い輪郭くっきりの白い雲が浮かんだようなフラットな絵と、絵具コテコテのペインタリーな抽象画の2パターン。大きなキャンヴァスにはこのふたつが同居していて、これはいいかも。ウェブサイトをのぞいたら京都出身で今年24歳という若さ。なんでこんな絵が描けちゃうんだろうってくらいイイ絵を描いてます。今後注目株。

2012/02/25(土)(村田真)

AKB48ドキュメンタリー第2弾『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on少女たちは傷つきながら、夢を見る』

会期:2012/01/27

全国東宝系

AKB48の第一弾は映画として全然ダメだと思ったが、TBSラジオにおけるライムスター宇多丸のレビューを聴いて、二弾を劇場で見る気になった。これはすさまじい作品である。震災とアイドルの絶頂期が重なる偶然も作用し、奇蹟が起きている。大槌町、宮古市、陸前高田市、気仙沼市、多賀城市など、映画で紹介された彼女らがまわった被災地は、すべて筆者も実際に歩いていたので、(彼女たちの目に映っていたであろう)画面の外側の風景が鮮やかに思い出される。これはまぎれもなく一種の震災をめぐるドキュメンタリー映画でもあり(彼女たちの苦労や、アイドルの存在意義が問われる危機ともかぶってくる)、おそらく、被災の程度で見方が変わるだろう。総選挙、ライブ、ジャンケン大会など、所詮ショーはつくりもののコップの中の嵐なのだが、過度な負荷がかかることで、アイドルの生身の人間としてのリアルな身体性が残酷なまでにあらわになってしまう瞬間がある。映画で幾度も挟み込まれる、自由学園明日館で撮影された綺麗なインタビュー映像(逆に、第一弾はこればっかりだった)と対比的なのも興味深い。それにしても、エンターテイメントのために、こんなに負荷をかけて大丈夫なのか? と思わざるをえない。

2012/02/26(日)(五十嵐太郎)

「望郷─TOKIORE(I)MIX」山口晃 展

会期:2012/02/11~2012/05/13

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

山口晃が、醜い景観の代表としてしばしば槍玉に挙げられる、電柱に注目し、それを和風のデザイン=「日本的なもの」に変えた絵画やインスタレーションを以前から発表していたことに興味をもっていたが、今回の展示ではなんと和風電柱が大きなサイズで立体化されている。メゾンエルメスの展示室に立つ柱を電柱に見立て、これに手を加えることで、インスタレーションに変えているのだ。こうした建築的なアイデアは実に愉快である。

2012/02/26(日)(五十嵐太郎)

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