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2012年08月15日号のレビュー/プレビュー

SSD 2012年度春学期 Interactiveレクチャー「境界線上のインテリアデザイン」♯3│SSDハウスレクチャー「最近のインテリアデザインについて」浅子佳英

会期:2012/07/11

阿部仁史アトリエ[宮城県]

今期、せんだいスクール・オブ・デザインのインタラクティブ・レクチャーの枠は、インテリアデザインをテーマに掲げ、その締めくくりとして浅子佳英を迎えた。コムデギャルソンによる店舗デザインの議論は、アーキテクチャ派というべき、いかにもゼロ年代らしい論客の分析装置を使いながら、むしろ突出した「天才」を語るのが興味深い。

2012/07/11(水)(五十嵐太郎)

被災地調査(気仙沼市、石巻市雄勝町、石巻市牡鹿半島、牡鹿郡女川町)

[宮城県]

あいちトリエンナーレ2013に参加するイギリスのアーティスト、ブラストセオリーのリサーチで、気仙沼、南三陸町などの被災地をめぐる。雄勝と牡鹿半島では、浜の漁師にインタビューを行なう。これがどのように来年の作品につながるのかが、楽しみである。個人的には、3月はまだ残っていたのに、女川のマリンパルが消えていたことにショックを受けた。ここではほとんどの瓦礫が消え、もはや保存される倒壊ビルしか残っていない。
翌日もブラストセオリーのリサーチで、NHK仙台にてディレクターへのインタビューに立会う。震災直後の閖上取材のときの映像を見せてもらったが、筆者が3月下旬にまわったときとほぼ同じ風景だった。むろん、そのときにはかろうじてクルマが走ることができる道路ができ、被災者は別の場所に移動していなくなっていたが、遺体捜索を優先し、瓦礫を片付けていなかったからだろう。改めて重要な状態を見たのだと気づく。

写真:上から、雄勝、気仙沼、牡鹿・富貴浦

2012/07/12(木)・13(金)(五十嵐太郎)

水と土の芸術祭2012

会期:2012/07/14~2012/12/24

新潟市内各所[新潟県]

2009年に続き、第2回を迎える「水と土の芸術祭」。なんで同じ新潟県内で、先行する越後妻有の「大地の芸術祭」とカブるようなイベントをやるのかというと、もちろん第1回のディレクターが「大地の芸術祭」と同じ北川フラム氏だったからだが、では今回、北川氏が抜けて竹久侑+堀川久子+丹治嘉彦+佐藤哲夫の共同ディレクター制となった以上、いかに第1回との差異化を図るか、いいかえれば、どれだけ越後妻有色を抜いて独自色を発することができるかが見どころのひとつとなるはずだ。ともあれ、まずは今回の芸術祭の拠点となる万代島の旧水揚場へ。ここではカマボコ型の巨大空間に原口典之と大友良英×飴屋法水たちの大作インスタレーションが据えられ、隣の旧水産会館には宇梶静江、下道基行、タノタイガらの作品が各部屋に展示されている。注目すべきはやはり原口と大友×飴屋たちのインスタレーションだ。原口は天井近くに数本のパイプを渡してそこから大量の雨を降らせるという作品を披露。オイルプールや目の前の運河から汲んだ海水プールもあったが、このシャワーだけで十分だ。大友×飴屋は、廃材を集めてあたかも津波の被害に遭ったかのような廃墟を組み立て、脇に数百足もの古靴を置いた。どちらも水の怖さを感じさせる作品だ。一方、その奥の部屋で上映していた吉原悠博の映像は、信濃川を河口から源流までさかのぼりながら風景を撮ったものだが、その映像の美しいこと。旧水産会館では、部屋の床と天井を貫いて水先櫓を建てたタノタイガが健闘。しかしこの万代島の会場でもっとも感心したのは、端っこに建っていたプレハブ小屋を大改造したwah documentの《おもしろ半分製作所》。内部は迷路状に入り組み、2階建てなのに3階にも4階にも感じられるマジックハウスなのだ。午後2時からバスツアーで遠方の作品鑑賞に出発。3年前のインスタレーションを再現したアン・グラハムをはじめ、白砂糖で描いた大画面をお寺の屋根裏で公開した佐々木愛、民家の各部屋にドローイングを飾ったイリーナ・ザトゥロフスカヤ、重要文化財の大邸宅に「異人」シリーズを展示した石川直樹などを見て回ったが、いちばん楽しかったのは西野達のインスタレーション。1軒の住宅の天井から上を取っ払い、周囲に回廊を設けて上から各部屋を見下ろせるようにしている。住宅にはだれか(ボランティア)が住んでいるので、観客は他人の生活をのぞき見ることになる。wahにしろ西野にしろ「水」とも「土」とも直接関係がない。それがいいのか、それでいいのか?

2012/07/13(金)(村田真)

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この空の花──長岡花火物語

『この空の花』は忘れ難いヘンな映画である。大林宣彦の個性というべき不自然な演出とセンチメンタリズムが満載ながら、徹底したリサーチをもとに、3.11から日本近代の戦争史、そして新潟の地震、あるいは長岡、東北、天草、長崎、広島、中国、シベリア、ハワイを横断する奇蹟のような時空の旅だ。強烈な作家性と、史実を想像によってつなぐ物語の力がある。渋谷のアップリンクで見たのだが、大林宣彦監督も小さな会場で一緒に見ていて、上映後にトークが行われた。かつて軍国少年だった彼が、その後、平和なニッポンを享受し、長岡の花火と3.11と遭遇してつくられた作品だとわかる。

2012/07/14(土)(五十嵐太郎)

スタジオ・ムンバイ展 PRAXIS

会期:2012/07/12~2012/09/22

TOTOギャラリー・間[東京都]

ギャラリー間のスタジオ・ムンバイ展を見る。会場は、一昨年のヴェネチアビエンナーレ国際建築展をきっかけに注目されて以来、あっとういう間に人気者になったことを示す、大入り満員だった。じっくり見ると、相当時間のかかる密度のある展示だ。が、ヴェネチア・ビエンナーレ、都現美と、おおむね同じ展示手法なので、個人的にはやや新鮮味に欠ける。ひとつのプロジェクトだけに絞るとか、ほかの見せ方はなかったのだろうか。

2012/07/14(土)(五十嵐太郎)

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