2019年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2012年08月15日号のレビュー/プレビュー

伊藤純代「Her Memory」

会期:2012/07/07~2012/07/29

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

服も肌もサーモンピンク(というより肉色?)の少女人形が6体ほど立っている。その顔は小さな人形の顔をツギハギしたもので、かなりグロテスク。しかも紙の上からドロリとした樹脂がかけられていて、サディスティックな趣味も感じられる。その人形のあいだにはウレタンフォームと造花による生け花が置かれ、そこにも毒々しい樹脂がかけられている。ちょっと生理的にあわないなあ。

2012/07/19(木)(村田真)

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あべゆか「欲望の国」

会期:2012/07/07~2012/07/29

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

純白のドレスを着けたマネキンの足下から、深紅の絨毯が奥まで敷かれている。マネキンの胸元にはニセの100ドル紙幣がはさまっていて、紙幣の肖像部分がおそらく作者の顔にすり替わっている。けっこうナルシシストだ。左右の壁には数点ずつ、奥の壁には100号6枚をつなぎ合わせた巨大画面が鎮座。描かれているのはサーカスかパーティーか、鮮烈な色彩とコテコテのマチエールでにぎやかな情景が展開している。マネキンも含めて楽しげで華やかなだけにいっそう虚無感が募り、見終わった後なにも残らないというか、虚しさだけが残る。そこまで意図しているのか。

2012/07/19(木)(村田真)

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及川さとみ「裏山しい冒険」

会期:2012/07/07~2012/07/29

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

乳房の写真ばかりを貼り合わせた女性像、真珠を積み重ねてできた樹木、イチゴのショートケーキの山……。ちょっと草間彌生のオブセッショナルアートを思い出す、そんなコラージュが暗くした展示室の壁に直接貼られている。片隅に懐中電灯が置かれ、それで照らし出して見る仕組みだが、こういう演出はぼくのなかでも賛否両論ある。

2012/07/19(木)(村田真)

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唐仁原希「さよならのあとに」

会期:2012/07/07~2012/07/29

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

最近まぶたに瞳をかいて目を異様に大きく見せるメイクが流行ってるらしいが、そんな巨大目の少女ばかりを描いた作品。ベラスケス風の額装された肖像画もあれば、下半身が鹿だったり魚だったりする怪物風もあるし、また、ロココ調の食卓につく群像やバスに浸かる人魚の群像もある。日野之彦的な顔と、金子國義風の趣味が混ざった世界。それにしても今回のワンダーサイトは4人とも(ミヅマの岡田裕子を入れれば5人とも)女性で、しかも全員が生理的に訴えてくるような作品だったなあ。

2012/07/19(木)(村田真)

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安彦祐介「あびこのスナップ コドモリミテッド」

会期:2012/07/17~2012/07/22

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

安彦裕介は日本大学芸術学部写真学科の助手をしながら、コンスタントに作品を発表し続けている写真家。1990年代の初め頃に「写真新世紀」や「写真ひとつぼ展」のようなコンペでたびたび入賞し、写真という表現メディアの特性を巧みに活かしつつ、現実世界の見え方を変容させていく作風で注目された。野口里佳から、彼女が大学在学中に安彦の言動から多大な影響を受けたと聞いたことがある。
今回のTOTEM POLE PHOTO GALLERYでの個展でも、その姿勢は基本的に変わっていない。パノラマサイズのフォーマットのカメラ、あるいは手製の4×5インチ判のカメラを使って赤外線フィルムで撮影し、「バライタ印画紙にプリント後、とある種類の薬品にて調色」した作品が並ぶ。赤外線フィルムを使うことで、モノクロームの画像のグラデーション、コントラストに変調をきたし、さらに「調色」によって色味も違ってくる。それが青、緑、茶色などのどんな色調に転ぶのかは、「やってみないとわからない」のだそうだ。そんな偶発的で不安定な画像のあり方が、今回の「コドモ」というテーマにはぴったりしているのではないだろうか。過渡期にある存在である子どもたちの妖しさ、不気味さ、とらえどころのなさが、安彦の錬金術的なテクニックによって、とてもうまく引き出されているのだ。技術と表現意欲のバランスが、どちらか一方に偏ることなく、むしろ生産的に働いている希有な例なのではないかと思う。
次回の個展のテーマはもう決まっていて「オヤジリミテッド」だそうだ。彼がまたどんな匠の業を見せてくれるのかが楽しみだ。

2012/07/19(木)(飯沢耕太郎)

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