artscapeレビュー

2010年01月15日号のレビュー/プレビュー

佐藤時啓

会期:2009/11/27~2009/12/22

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

森のなかの1本の木のまわりに白い光がいくつも浮かび上がる写真。まるで木霊を写したかのようだが、もちろん手鏡で日光を反射させたもの。昔の作品かと思ったら、最近、白神山地と八甲田山で撮影した新作らしい。なんか懐かしい。

2009/12/22(火)(村田真)

「鈴木八郎のまなざし──オリジナルプリント」

会期:2009/12/01~2010/12/23

JCIIフォトサロン[東京都]

鈴木八郎(1900-1985)は戦前からカメラ雑誌の編集者として知られ、1960年代以降は長くペンタックスギャラリーの館長として資料や写真作品の収集に力を尽くした。どちらかといえば、写真の世界の裏方に徹した人だが、今回の作品展を見ると、写真家としてもなかなかの才能の持ち主だったことがよくわかる。写真集としては『わが庭を写す作画の実際』(アルス、1938)しかないが、自らが編集していた雑誌などにも多数の作例写真を発表していた。本展ではその中から、鈴木自身が1920~70年代に制作した「オリジナルプリント」を中心に約60点が展示されていた。
作風として一番近いのは、やや時代は下るが山陰の植田正治だろう。「光と線のリズムに依る音楽──これこそ吾々の選ぶべき唯一の表現形式である」(鈴木八郎「視覚音楽の提案」『芸術写真研究』1923年4月号)と書いているが、画面を視覚的な「リズム」によって音楽的に構成していく手法に共通性を感じる。撮影を心から愉しみ、被写体とのびのびと対話していくような姿勢は、1920~50年代のアマチュア写真家たちに共通するものといえるのではないだろうか。この時代は、まだ写真趣味が生活に余裕のある人たちの特権でありえていたのだ。何を撮っても品のよさが自ずとあらわれていて、目に快くすっと馴染んでくる。

2009/12/22(火)(飯沢耕太郎)

depositors meeting 7

会期:2009/12/21~2009/12/23

art&river bank[東京都]

横浜美術館をあとにして多摩川のart&river bankへ。美術、デザイン、建築、批評、ファッション、展示プラン、プロジェクトなど、さまざまなジャンルで活躍するクリエイターのポートフォリオが会場の棚に設置され、来場者が自由にファイルを閲覧することができる年末恒例のイベントで、今年は7回目になるのだそう。今回、セレクタとして初めて参加させてもらったので楽しみにして訪問した。小さな会場だったが、最終日のせいもあるのか若い人たちで賑わっていた。来場者からの感想が書かれた“ポストイット”が日別に色分けされて壁面に貼られていたり、期間中だけオープンの「bar 川の家」でドリンクやちょっとした料理がオーダーできたり、楽しい工夫も憎い。長居してしまうのも納得で、私ももれなくたくさんのファイルを堪能。良い時間だった。

2009/12/23(水)(酒井千穂)

explosion shirt 木村稔 白井美穂 高安真愉美

会期:2009/12/19~2010/01/31

explosion tokyo viewing room[東京都]

西麻布のエクスプロージョン・トウキョウという知らない場所で、知ってるアーティストが展覧会をやってるとの情報が。地図を見ると、何度も行ったことのある場所だった。息子を自転車に乗せてたずねてみると、旧知の小池美香ちゃんがお出迎え。展示はシャツやファブリックや非常口のほか、ボイスとシュナーベルの版画も。なんじゃこりゃあ。クリスマスイブイブなのでタダ飲みタダ食いして帰った。ごちそうさま。

2009/12/23(水)(村田真)

横浜美術館開館20周年記念展:束芋「断面の世代」

会期:2009/12/11~2010/03/03

横浜美術館[神奈川県]

デビューから10年の束芋が横浜美術館で5点の新作大型映像インスタレーションを発表。すべてが新作の個展というので期待に胸を膨らませて出かけたが、なんとも運が悪く、入場した途端に、館内で電気系統のトラブルが発生。集合住宅とそこでの個々の生活をモチーフに描いた作品は見ることができたが、他はほとんど見ることが叶わなかった。先に常設展を見ながら待っていたけれど、結局当日は復旧の見通しが立たないと伝えられ「後日再入場を」とチケットを1枚渡されて、とぼとぼと会場を後にすることになった。作品がほとんど見られなかったのはもっとも残念だが、その対応もなんとなく腑に落ちない。美術館でこんなアクシデントに遭遇することもめったにないけれど、こういう場合入場料は返金しないのが当然なのだろうか。気軽に行ける美術館ではないんだけどなあ。こんなことなら25日のイベント開催に合わせて出かけるんだった、なんて恨めしい思いを引き摺った。

2009/12/23(水)(酒井千穂)

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