artscapeレビュー

2010年01月15日号のレビュー/プレビュー

MAMプロジェクト010 テレルヴォ・カルレイネン+オリヴァー・コフタ=カルレイネン

会期:2009/11/28~2010/02/28

森美術館ギャラリー1[東京都]

世界各地で市民の不平不満を聞いて合唱曲にし、市民に歌ってもらうというプロジェクト「不平の合唱団」の映像。おもしろいけど、こういうのはこういう場所で見せるより、テレビ(公共放送)で見てみたいなあ。

2009/12/19(土)(村田真)

NO MAN'S LAND──創造と破壊

会期:2009/11/26~2010/01/31

フランス大使館[東京都]

解体前のフランス大使館旧庁舎を舞台にした展覧会。期待したほどではなかったなあ。作家の選択を誤った気がする。この時期は別館で東京藝大の展示もやっていて、そっちのほうがおもしろかった。とくに、カメラや双眼鏡にセンサーを組み合わせ、人が近づくと動いたり光ったりする装置を廊下や階段に設置した笹川治子の《セキュリティーシステム》がすばかしい(すばらしく、ばかばかしい)。村田真賞だ。

2009/12/19(土)(村田真)

『現代建築家コンセプト・シリーズ3乾久美子──そっと建築をおいてみると』乾久美子

発行所:INAX

発行日:2008年9月25日

不思議な本である。建築家の本として、これまで見かけたことがないタイプの本だと思った。いわゆる作品集ではなく、建築論でもない。作品の写真は少なくないが多くもない。むしろその作品解説のテキストが主体であるが、いわゆる作品を論理だてて説明する解説というより、すべてが小説的な文章にも感じられる。だからといって論理的でないわけではない。むしろ読み始めてみると感じるのは、どこかにぶつかっても方向を変えながら進んでいくような途切れることのない一貫した思考の流れである。例えば知覚と空間についての話に、ふと小説の話が挿入される。でもそこに境界はない。物語とも、解説文ともつかないテキストが、乾久美子の思考を示しているように思われた。物語が解説であり、解説が物語になっている。「そっと建築をおいてみると」というタイトルは、まさにそんな彼女の建築のつくり方を表わしているように思われた。建築と環境の境界をつくらない、建築と人との境界をつくらない、そんな建築の新しい静かな存在感がにじみだしてくるような本だった。なおテキストのページにも、薄いカラーで印刷された図面や写真がそっと背景におかれており、本を「読む」のではなく「見る」という行為を始めると、ゆっくりとそちらが浮かび上がってくるようなつくりになっている。

2009/12/19(土)(松田達)

壺中天『2001年壺中の旅』

会期:2009/12/19~2009/12/23

壺中天[東京都]

かつて向雲太郎が絶賛された作品の再演。壺中天らしさが存分に堪能できる上演だった。白塗りの裸体など古典的な舞踏の意匠を纏いながら、等身大の若者の暴力性やかわいさや惨めさをストレートに表わすなんてところがその「らしさ」の筆頭だろう。天井から大量の花吹雪を浴びつつ、男2人が感動的な抱擁と接吻を成し遂げる冒頭のシーン、地獄の番人(?)の前で、ソーセージの男根を自ら切断してゆくシーンなどの名場面は、狭い会場ならではの生々しさも相まって、むせかえるような暑苦しさに圧倒されつつも魅力的だった。海外での評価は非常に高い彼ら。もっと国内で評価され人気を得るべき存在なのになあとあらためて思わされた。

2009/12/19(土)(木村覚)

井上雄彦 最後のマンガ展 重版〈大阪版〉

会期:2010/01/02~2010/03/14

サントリーミュージアム[天保山][大阪府]

2008年に東京で開催され大反響を巻き起こした展覧会なので、何を今さらという気もするが、恥ずかしながら当方は初見なので感想を記しておく。まず、絵が上手い。ペン画はもちろんだが、大作の墨絵は圧巻と言う他なし。週刊誌の連載で超多忙なはずなのに、いつの間に墨と筆の扱いをマスターしたのだろう。仕事を遂行するうえで必然的に身についたのだろうか。立体漫画であり巨大紙芝居、映画的な感覚も兼ね備え、インスタレーションでもある本展。過去の原稿を並べたこれまでの漫画展とはまったくレベルの違う代物だということは間違いない。

画像クレジット:©I.T.PLANNING

2009/12/20(日)(小吹隆文)

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