artscapeレビュー
2010年01月15日号のレビュー/プレビュー
絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から
会期:2010/01/16~2010/04/04
国立国際美術館[大阪府]
2000年以降に登場した若手世代を中心に28作家をセレクトして、現代日本の絵画シーンを展観する意欲的な企画展。先行世代としてO JUN、小林孝亘、奈良美智らが入っているが、彼ら以外の多くは近年頭角を現わしてきた20代~30代前半が占める。なかには加藤泉やタカノ綾、町田久美など既に著名な作家も入っているが、個人的には栗田咲子、はまぐちさくらこの関西勢2人がどう評価されるかに注目している。気合の入った展覧会になりそうなので、正月ボケの矯正にも最適だ。
2009/12/20(日)(小吹隆文)
第13回TEPCOインターカレッジデザイン選手権 公開審査会
会期:2009/12/20
建築会館[東京都]
「ジェンダーを考える家」というテーマでの学生アイディアコンペの公開審査会。盛り上がり、最後の瞬間までどの作品が最優秀になるのか分からない審査だった。審査員は、青木淳、西沢立衛、永山祐子、草山丈太、五十嵐太郎(兼ナビゲーター)の5人。応募総数288点のうち、一次審査を通過した10組によるプレゼンと審査。今回は特に同じ学校でチームを組まなければならないという原則があったらしく、個人の勝負というより学校対抗のチーム戦でもあった。最終段階で4作品に絞られた。14の開口部を持ったボックス内部が同性の性も意識させる阿部妙子案(武蔵野美術大学)、ベッドの下の隠れた空間を表に出す高橋卓他案(東京理科大学)、都市のなかの巨大な二重壁の内側が漂白されてジェンダーから開放する馬場隆行他案(京都工芸繊維大学)、迷宮的な壁が他者のジェンダー的な存在を浮かび上がらせる蔵本恭之他案(広島工業大学大学院)である。どれが最優秀になってもおかしくなかった流れであったが、阿部案がその中で選ばれたのは、建築的な空間の可能性をもっとも感じさせたところと、一次審査からの進歩が大きかったことが大きな決め手になったようだ。審査員からは的確で鋭いコメントが続出し、長時間のイベントとして非常に刺激的だった。
2009/12/20(日)(松田達)
横町慶子『かわうそ』(HARAJUKU PERFORMANCE+)
会期:2009/12/19~2009/12/20
ラフォーレミュージアム原宿[東京都]
ロマンチカの林巻子のソロ舞台。声だけの相手役として田口トモロヲ。音楽を菊地成孔が担当した。林のダンスや芝居はまるで「美貌」が踊りしゃべっているよう。独特のわざとらしさが芸術志向のダンスや演劇にはない中毒性を帯びていて、クセになる。男が車でひいてしまった(はずの)女が気づけば車内にいて、気づけば男を虜にしている。女とは男にとっての魅惑的な虚像(うそ)なのだといったメッセージを、演劇的な形式を借りつつ適度に自由に逸脱して語る(背景が映写される部屋や景色の映像によって次々と変わるところやいくつかのフレーズをレディ・メイド化して執拗に反復するところなど)。物語や「美貌」のあり方に既視感はあるとしても、そうした語り方に、新たなパフォーマンスのかたちをおぼろげながらも見た気がした。
2009/12/20(日)(木村覚)
繁田真樹子 キモノ展
会期:2009/12/10~2009/12/22
作品は何度か見たことがあるが、個展は初めてかもしれない。日常的な風景をモチーフにした着物も美しいが、海苔巻き、寿司などのユーモラスな柄にも惹き付けられる。描かれた光景が立体的に浮かび上がってくるようなロウケツの豊かな表情と色とりどりの色彩がまるで絵画のよう。自由な想像力という言葉が頭をよぎる会場だった。
2009/12/21(月)(酒井千穂)
中村明弘 写真展「時空のスパイラル・熱海」
会期:2009/12/16~2009/12/29
銀座ニコンサロン[東京都]
温泉街・熱海の写真展。古き良き昭和の温泉街とキッチュなアイテム、そしていかにも平成的な高層マンションが共存する街並みが写し出されていた。東京などの大都市に比べると圧倒的に土地が狭く、丘陵地に建物が密集しているせいか、新旧の建造物が重層的に折り重なっている様子が、じつにおもしろい。
2009/12/21(月)(福住廉)