artscapeレビュー

國府理 追悼展

2014年12月15日号

会期:2014/10/19~2014/11/16

みんなのうえん[大阪府]

今年4月、個展開催中の会場にて不慮の事故で亡くなった國府理の追悼展が開催されていた。会場は、大阪市住之江区にある「北加賀屋みんなのうえん」という空き地を利用した都市農園。そんな場所があることも、直径4mのパラボラアンテナを使った國府の《Parabolic Farm》が2013年の秋からずっとここに設置されていたという事実も私は今回初めて知った。会場についてまず釘付けになったのは、その《Parabolic Farm》の様相。以前、個展など他の会場でも見たこの作品は、ここでは野菜やクローバーなど様々な植物が成育する土壌、完全に畑と化していた。私が訪れたのは日も傾き周囲の建物の影に包まれつつある午後だったのだが、そこに逞しく生い茂る力強く伸びるさまざまな野菜のありようが印象的で記憶に残る。農園に隣接する建物では生前描かれたスケッチやドローイング、国府が関わった近年のプロジェクトや、ここに作品が設置されるまでの作業の様子を撮影した記録写真などが展示されていた。どれをとっても今展の主催者やその他の関係者の追悼の念が温かく伝わってくる展示。見ることができてよかったとしみじみ感じた展覧会だった。

2014/11/03(酒井千穂)

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