2019年07月15日号
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artscapeレビュー

Nerhol ATLAS

2014年12月15日号

会期:2014/10/16~2014/11/20

IMA gallery[東京都]

2007年から活動しているNerholは、1980年生まれの田中善久と81年生まれの飯田竜太のアートユニット。彼らのポートレート作品は、出版物では見たことがあるが、実物は今回の展示で初めて見た。既に彼らの手法──被写体に200回シャッターを切って撮影した写真のプリントを、カッターで少しずつずらして切って貼り合わせ、厚みのある立体物を作る──については知識があるわけで、それを踏まえつつ作品がどう見えてくるかに興味があった。
結論からいえば、手法がどうしても最初に目についてくるこの種の作品の例に漏れず、その核心になかなか入り込めないもどかしさを感じた。人間の”顔”は、いうまでもなくとても心そそられるテーマであり、多くのアーティストたちがその謎解きに取り組んできた。Nerholの試みも、むろんその一つなのだが、2012~13年に開催された各展覧会に出品した作品を再構成し、「ATLAS」と題する書物の形で提示した今回の展示を見ても、カットアウトの繊細な手さばきと、”顔”の歪みのオプティカルな視覚的効果の面白さ以上のものは感じとれなかったのだ。
被写体に選ばれているのが、若い世代の日本人、外国人の男女だけという所に、“顔”につきまとう異様さ、異常性のファクターをできるだけ押さえて、むしろ平静な日常の“顔”を分析的に見直していこうという志向性を見ることができる。その結果として、彼らの「ATLAS」は、平板で退屈な印象を与えるものとなった。それこそが現代の“顔”なのだという反論が予想できるが、Nerholに限らず、このところ平均化、標準化の状況にすんなりおさまってしまうような作品が、多すぎる気もしないではない。人間の“顔”というのはこの程度のものなのだろうかと、無い物ねだりをしてみたくなる。

2014/11/07(金)(飯沢耕太郎)

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