2019年07月15日号
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artscapeレビュー

フジタのいる街角──巴里の誘惑、1910-30年代

2014年12月15日号

会期:2014/10/25~2014/12/07

目黒区美術館[東京都]

「海外で学んだ画家たちとその作品」を収集方針のひとつに掲げてきた目黒区美術館の、所蔵品でたどる「パリの日本人」の第1部。藤田嗣治を中心に、藤田以前の安井曾太郎、梅原龍三郎から山口薫、村井正誠あたりまで、戦前に渡仏した画家たち75人の作品・資料を展示している。肝腎の藤田は素描や水彩が大半で、パリで絶大な人気を博した「乳白色」が見られないのが残念だが、それでも西洋に追随したほかの画家たちと比べれば一頭地を抜いてるなあ。藤田がパリで学んだのは「西洋並み」の美術ではなく、西洋でもなければ日本でもないまったく新しい美学だったはず。ところが藤田以後になると、その藤田のエピゴーネンまで出てきて、いったいなにしにフランスまで行ったのかと考えてしまう。同時に展示されていた大きな旅行用トランクや、欧州経路の汽船のチケットや食事のメニューなどを見ると、よほど裕福な家柄でないと留学できなかったことがわかる。それだけの犠牲を払い、数年間滞在して、日本に持ち帰ったものが「フランス帰り」の肩書きだけだったとしたら哀しい。ついでにいうと、これらの画家のなかには藤田をはじめ伊原宇三郎、清水登之、中村研一ら第2次大戦中に戦争画で名を馳せた人たちが何人もいる。国際的視野を身につけたはずの彼らがなぜ戦争画に走ったのか、興味深いところだ。

2014/11/05(水)(村田真)

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