artscapeレビュー
佐藤信太郎「The spirit of the place」/「夜光 Night Light」
2014年12月15日号
会期:2014/10/31~2014/12/20
キヤノンギャラリーS/フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]
佐藤信太郎のデビュー写真集『夜光 Nights Lights』(1998年)が青幻舎から新装版で再刊されたのにあわせて、東京都内の二つの会場でほぼ同時期に彼の個展が開催された。キヤノンギャラリーSの「The Spirit of the place」展では、盛り場のネオンサインを撮影した「夜光」だけでなく、彼の他のシリーズ「非常階段東京 ─ TOKYO TWILIGHT ZONE」と「東京|天空樹 Risen in the East」も同時に展示され、フォト・ギャラリー・インターナショナルでは「夜光」に絞った展示を見ることができた。
デジタルプリントによって、より鮮やかに、くっきりと甦った彼の作品をあらためて見直すと、佐藤が3つのシリーズを通じて、東京の新たな見方(「夜光」シリーズには大阪で撮影された写真も含まれているが)を提示しようとしてきたことがわかる。それは、都市を光と形と色という要素に還元して、そのテクスチャー、構造を定着しようとする意欲的な試みであり、近作になるにつれて、より包括的で、柔軟な把握の仕方があらわれてきているように思う。ちょうど区切りのいい時期に、旧作をまとめて展示で来たのはとてもよかった。
だが、問題は佐藤が次にどんなアプローチを見せてくれるかだろう。現在形で変貌しつつある巨大都市を俯瞰できる視点を確保するのは、そう簡単なことではない。インターネットのような不可視のネットワークが、都市の中枢部分を占めるようになってくると、写真でそれを視覚化するのは、ますますむずかしくなってくるからだ。佐藤がその難問にどう立ち向かっていくのか、次作に期待したいものだ。
キヤノンギャラリーS 2014年10月31日~12月15日
フォト・ギャラリー・インターナショナル 11月7日~12月20日
2014/11/13(木)(飯沢耕太郎)