2019年09月15日号
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artscapeレビュー

山本渉「欲望の形──器の濃き影」

2014年12月15日号

会期:2014/10/31~2014/12/07

NADiff Gallery[東京都]

山本渉の「欲望の形──器の濃き影」のシリーズは、ぜひ写真集の形で見てみたいと思っていたのだが、今回のNADiff Galleryでの展示にあわせて、小冊子ではあるがそれが実現した。見れば見るほど、なかなか味わい深いシリーズだと思う。
被写体になっているのは男性の自慰用の器具で、「オナホール」という身も蓋もない名前で呼ばれている。山本はその内部に石膏を流し込んで型取りし、黒バックのモノクロームで撮影した。結果として、そこにあらわれてきたのは、何とも奇妙なフォルムを持つ物体だった。あるものは植物的な(ドイツのカール・ブロスフェルトの『芸術の原型』を思わせる)、あるものはねじ釘状のメカニックな形態をとり、中にはアニメのキャラクターのフィギュアを象ったものまであるという。まさに「欲望の形」そのものだが、普通は触覚によってしか味わうことができないその形状を、ネガをポジに逆転するような発想で見事に視覚化した所に、山本の卓抜なアイディアが活きていると思う。
展示は小ぶりなフレーム入りのプリント(25・4×20・3cm)が14点並んでいるだけなので、いささか物足りない。もう少し数が増えれば、タイポロジー的な比較も可能になるし、写真の大きさも「等身大」にこだわることはなかったのではないだろうか。「欲望の形」というテーマも、「オナホール」だけに限定するのはもったいない気がする。もっといろいろな対象物に広げていけるのではないだろうか。

2014/11/07(金)(飯沢耕太郎)

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