artscapeレビュー
尾形一郎/尾形優「中華洋楼 Eclectic Chinese House」
2014年12月15日号
会期:2014/11/05~2014/11/22
ZEN FOTO GALLERY[東京都]
建築家でもある尾形一郎、尾形優の写真展示には、いつも工夫が凝らされている。今回ZEN FOTO GALLERYで発表されたシリーズのテーマは中国広東省の穀倉地帯に忽然と出現した、何とも奇妙な中洋折衷の建築群(洋楼)である。その互いに似通ってはいるが微妙に違うフォルムが増殖していく、映画セットのような人工性を強調するため、作品を大きさが異なるフレームに入れて床に並べる形で展示した。つまり、かなり大きな840×1050ミリのフレームから、その厚み分(40ミリ)ずつ小さくなっていって、最後は240×350ミリの小さなフレームになるのだが、それらが一つの箱に入れ子状におさまっていて、一点一点取りだして並べることができるようになっているのだ。(以下の動画を参照)
それだけではなく、今回は石灰を水で練った漆喰を塗布したシートに顔料を吹き付ける、フレスコ画の技法を用いてプリントしているのだという。その結果として、元の建物の風化したコンクリートの質感が実に丁寧に再現されていた。
今回の展示は、先に本欄で紹介した彼らの新著『私たちの「東京の家」』(羽鳥書店)の刊行記念展でもある。『私たちの「東京の家」』には「中華洋楼」だけではなく、メキシコの「ウルトラ・バロック」の教会、ナミビアの砂に埋もれかけたドイツ移民たちの住宅、ギリシャの白い箱形の鳩小屋などを撮影した写真とテキストもおさめられている。ということは、もしそれらの写真群の展示が実現したならば、今回と同様に相当に凝った仕掛けのインスタレーションになることは間違いないだろう。それはぜひ見てみたい。そろそろ美術館クラスの大きな会場での展示を考えてもいいのではないだろうか。
2014/11/08(土)(飯沢耕太郎)