2019年07月15日号
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artscapeレビュー

宮本三郎の仕事1940's-1950's──従軍体験と戦後の再出発

2014年12月15日号

会期:2014/08/09~2014/12/07

宮本三郎記念美術館[東京都]

コレクションから戦中戦後の作品を展示。いわゆる戦争画は《飢渇》だけ、それも題名からうかがえるように敗色濃いものだが、代表的な《山下、パーシバル両司令官会見図》《香港ニコルソン附近の激戦》といった大作の下絵やスケッチ類、さらに宮本が挿絵を手がけた『週刊小国民』『画報 躍進之日本』なども出ている。敗戦後、戦争画関連の作品・資料は焼いてしまったという画家も多いと聞くが、宮本も複雑な思いはあっただろうけど、少なくとも戦争画に手を染めた事実は消そうとはしなかったようで、ちゃんと残していたのだ。戦後の40年代後半はまだ戦争(画)を引きずっていたのかシックな色合いの絵が多かったが、50年にピエタの構図を借りて戦争体験を総括するかのような《死の家族》を発表。1年たらずの滞欧を経て次第に色彩も形態も開放的になり、50年代後半にはアンフォルメル旋風に影響されたような半抽象画に移行し、このままだと60年代は純粋抽象に突入するのではないか、と気になるところで終わっている。実際は抽象に走ることなくケバいヌード画に展開していくのだが、後半生も含めてやっぱり戦争画ほど目的が明確で、おそらく画家自身もやりがいを感じ、しかも多くの人々の心を動かした画業はないんじゃないかとふと思う。もちろん多くの人々の心を動かすのが必ずしもいいこととは限らないが。とくにひとつの方向に動かすのはね。余談だが、12月6日には天皇・皇后両陛下が鑑賞されたという。戦争画が含まれているから?

2014/11/20(木)(村田真)

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