2019年07月15日号
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artscapeレビュー

赤瀬川原平の芸術原論展──1960年代から現在まで

2014年12月15日号

会期:2014/10/28~2014/12/23

千葉市美術館[千葉県]

訃報の2日後に始まった大回顧展。初期の油絵から読売アンデパンダン、ネオ・ダダ、ハイレッド・センター、模型千円札までの前衛芸術を経て、超芸術トマソン、路上観察学会、ライカ同盟、老人力まで、約半世紀の活動から500点を超える作品・資料を集めている。これを見ると希代の芸術家にして趣味人、赤瀬川原平の全体とまではいかなくてもその輪郭がわかるし、そこに日本の前衛芸術の縮図を見ることができるような気もする。たとえば《宇宙の梱包》。梱包作品をつくってるうちに、このままだと包むものがどんどん大きくなり、しまいに宇宙まで包まなければならなくなると考え、カニ缶を買って中身を食べ、ラベルを内側に貼り替えて内外を逆転させたという代物。同じ梱包芸術でも半世紀以上にわたって愚直に巨大化させていったクリストとは対照的に、プロセスをすっ飛ばしていきなり結論を出してしまったわけだ。明解ではあるが、「芸術」との悪戦格闘を避け、いわばトンチで解決してしまったといえなくもない。こういう逆転の発想は、路上の無意味なものに意味を見出す「超芸術トマソン」や、心身の衰えをプラスに転化する「老人力」にも生かされている。いや待てよ、高松次郎の「影」や「単体」シリーズも、河原温の「日付絵画」シリーズも、関根伸夫の「位相─大地」も、日本の前衛芸術のすべてとはいわないまでも相当な数はトンチの発想じゃないか、とさえ思えてくるのだ。ところが美術界ではトンチが利いても、まったく通じない世界もあった。司法だ。「千円札裁判」は無粋なことに、前衛芸術におけるトンチの魔法を解いてしまったのだ。以後、赤瀬川は前衛芸術の一線から降りてしまう。でもそれ以降の活動のほうがよっぽどポピュラリティに富んでいたけどね。

2014/11/01(土)(村田真)

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