2022年05月15日号
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artscapeレビュー

2013年11月15日号のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2013 パブリック・プログラム イン・ディスカッション 藤村龍至/あいちプロジェクト 第5回最終発表

愛知芸術文化センター12階 アートスペースEF[愛知県]

藤村龍至のあいちプロジェクトのパブリック・ミーティングの最終発表を聞く。さまざまな要素をどんどん蓄積するデザインは、東工大における相対主義的な建築の流れと同時に、こうあるべきだったポストモダンを想起させる。二者択一の投票形式は、一般人へのハードルを下げ、意見やコメントを集めるツールとしてうまく機能したと言える。ただ、途中の段階で、コメントを収集するシステムとしては見事だが、最後にどこかで流れを切断する「終わり」が訪れる。そのときの投票の意味をどう位置づけるかは課題かもしれない。この日も最終的に提示された二案は、それぞれに長所と短所があり、両者の融合がベストなのだが、投票する際は、どちらかを選ぶしかない。ちなみに、藤村の会場とした中央広小路ビルは、最もアートにふさわしくない場所だ。が、彼はいわゆる空間インスタレーションをしないだろうから、ここで依頼することになった。その結果、公開された設計作業の途中、来場者が意見を交わし、投票する新しい設計事務所の場がビルの一角に出現したのである。

2013/10/06(日)(五十嵐太郎)

横須賀功光/エドヴァ・セール「Shafts & Forms」

会期:2013/09/21~2013/11/22

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

EMON PHOTO GALLERYでは、2003年に亡くなった横須賀功光が遺した作品を定期的に発表している。今回は1964年の日本写真批評家協会新人賞の受賞記念展で最初に発表され、広告写真家としての彼のイメージを刷新した「射」(Shafts)シリーズから12点(ほかに「光学異性体」「光銀事件」から1点ずつ)が展示されていた。
注目すべきなのは、横須賀の写真とともにフランスの女性彫刻家、エドヴァ・セールのブロンズ彫刻作品が展示されているということだ。有機的なフォルムの物体が連なって形をとっていくセールの彫刻作品は、「射」の写真群ととてもうまく釣り合っているように感じた。金属製のオブジェを撮影した「射」は、横須賀の写真のなかでも最も抽象度の高い、見方によっては彫刻的と言える作品だからだ。
ただし横須賀がこのシリーズでもくろんでいるのは、オブジェそのものよりも、その周囲に広がる反射光の偶発的なヴァイブレーションを、銀塩のフィルムに定着することであり、一見彫刻のように見えるオブジェは、その「光銀事件」を引き起こすための装置にほかならない。その意味ではセールの「純粋彫刻」とはまったく質が異なる作品と言える。だが、逆に違ったタイプの作品が併置されていることで、活気あふれる展示空間が成立していたと思う。今回のような異種格闘技の展示は、横須賀の写真に限らず、これから先もっと積極的に企画されてよいのではないだろうか。

2013/10/09(水)(飯沢耕太郎)

アーク・ノヴァ

[宮城県]

空気膜による松島のモバイルシアター、アーク・ノヴァを訪問した。最初に磯崎新の家で見せてもらったとき、本当にできるのかとも思ったが、ついに実現している。空間のねじれと穴は、造形を担当した彫刻家アニッシュ・カプーアそのものだ。濃い赤色なので、内部に入ると、大きな臓器を想起させる。現代アートの作品の内部にまぎれ込んだような、不思議な空間の体験である。地元の子どもを招いてのコンサートに立ち会ったが、音楽が鳴り響くと、まさに空間が鼓動していた。

2013/10/09(水)(五十嵐太郎)

田村葵 展「energy flow」

会期:2013/10/01~2013/10/13

ギャラリーマロニエ space5[京都府]

前回、京都らしい古い建物の和室空間で個展を開いていた田村葵。今回はコンクリートうちっぱなしの壁面空間というまったく趣きの異なるギャラリーで新作を発表していた。作品は藍墨と紫墨で描かれた水墨画。微妙な表情を見せる墨の色もだが、余白部分が大きく占める画面に繊細に表現された波や文様のようなイメージ、それらのタッチが、目には見えない風の流れや湿度感、変化する光の表情を思わせてそこはかとない奥深さをたたえている。展示空間に射し込む外光の具合によっても印象が変化して見えるのが不思議。一見、おとなしすぎるくらいの表現にも見えるのだが、それはむしろ田村の狙いでもあり彼女の作品の魅力とも言えるだろう。作品を介してさりげなくその場の光の様子や空気、時の流れを見る者に意識させる。また次はどんな雰囲気の空間で新作が発表されるのか楽しみにしている。

2013/10/10(木)(酒井千穂)

TOKYO 1970 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS 9

会期:2013/10/05~2013/10/29

アルマーニ/銀座タワー9階[東京都]

東京・銀座のアルマーニの9階にできた新しいスペースで「時代を挑発した9人の写真家たち」というサブタイトルの写真展が開催された。出品作家と作品は有田泰而「First Born」、沢渡朔「Kinky」、須田一政「わが東京100」、立木義浩「舌出し天使」、寺山修司「摩訶不思議な客人」、内藤正敏「東京」、細江英公「シモン 私風景」、渡辺克巳「新宿群盗伝」、そして森山大道の「写真よさようなら」(写真集未収録作)である。
見ていてどこか既視感がある写真が多いのは、キュレーションを担当した長澤章生が、かつて彼が銀座で運営していたBLD GALLERYで展示した作品が多いからだろう。BLD GALLERYは現在休廊中なので、そのコレクションをこういうかたちでお披露目しておくのは悪くないと思う。1970年代は日本写真の黄金時代であり、この時期の写真を幅広い観客に知ってもらうには、とてもいい企画ではないだろうか。ただ「時代のトリックスターであった寺山修司を座標軸に据え、それぞれ何らかの形で彼の磁場と引き合う関係にあった」写真家たちを取り上げるという企画者の意図は、あまりよく伝わってこなかった。顔ぶれがあまりにも総花的すぎるし、作品点数もやや多すぎた。須田一政が45点、渡辺克巳が39点、内藤正敏が30点という数は、それほど広くない会場では、あまりバランスのよい展示にはならない。もう少し点数を絞り込んで、ゆったりと見せてもよかったのではないだろうか。
会場に作家解説、作品解説がまったく掲げられていないのも気になった。一人ひとりの写真史的な位置づけがもう少しくっきり見えてくれば、観客の興味をもっと強く喚起することができると思う。

2013/10/10(木)(飯沢耕太郎)

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