artscapeレビュー
2013年11月15日号のレビュー/プレビュー
喫茶店「丘」
[愛知県]
噂に聞いていた岡崎のディープな喫茶店「丘」にて、昼食。masayoshi suzukiギャラリーのすぐ近くである。なるほど、これは大竹伸朗のインスタレーションが内装になったような空間だ。広くはない店内で、映画音楽とヴァン・ヘイレンが同時に鳴っていたのも驚きである。店主が手づくりでつくり上げた、アート作品としての喫茶店だ。
2013/10/24(木)(五十嵐太郎)
4の扉──境界を超えて
会期:2013/10/22~2013/10/28
東京都美術館[東京都]
出品作家は新恵美佐子、土方朋子、義村京子、高野浩子の4人で、ひとりも知らない。ただ都美館の巨大な展示室をどれだけ有効に使ってるかという興味で見に行く。大きな作品を出しているのはふたり。新恵は天井の高い壁に巨大画面のタブローを2点も展示している。それぞれ510×540cmと424×510cmあるから、18畳と14畳分に相当する。もちろん1枚のタブローではなく、パネルを何枚もつないだものだが。高野は天井の低い展示室に木彫で本棚と本をつくり、古い家具とともにインスタレーションしている。ボルヘスの迷宮の図書館にはほど遠いが、展示室の中央を床から天井まで占拠するくらいの量塊感はあり、物理的な説得力がある。あとのふたりは比較的小さめなのでスルー。
2013/10/25(金)(村田真)
ボブ&ウィーダ
会期:2013/10/21~2013/10/29
YUGA Gallery & 立体工房[東京都]
芸大の日台交流展(「Do it yourself, Brain Massage」)を見に行ったらたまたまやってたので入ってみた。ひとりだけ目に止まった作家がいた。人のかたちに切り抜いた板に人の姿を描いた小さめの絵が2点あって、どちらも色とタッチとサイズが絶妙なのだ。作者はサブリナ・ホーラク。どこの人?
2013/10/25(金)(村田真)
Do it yourself, Brain Massage──可塑的な身体と術
会期:2013/10/23~2013/10/30
東京藝術大学絵画棟アートスペース1・2[東京都]
台湾・日本芸術文化交流事業だそうで、日台それぞれ5人ずつが出品する彫刻展。遺跡で発掘された携帯電話やゲーム機と、発掘現場の写真やビデオを出品したのは涂維政。こういう「未来の遺跡」ネタは珍しくないけれど、壁の上を見上げると古典的なレリーフのレプリカが常設展示されていて、下の作品と呼応しているのは珍しい。偶然かもしれないが、これはポイントが高い。その隣には、虹色に輝くバルーンが部屋いっぱいに置かれ、なかに入れるようになっている。これは王徳瑜の作品で、なかに入ると球状ではなくドーナツ型であることがわかる。その隣の部屋は朱駿騰の作品で、コンセントから数百個のプラグが数珠つなぎになって炊飯器につながり、実際にメシが炊けてるというインスタレーション。いい香りがする。しかしどうも台湾の作品はどこかでだれかがやってたような既視感がある。その点、日本はこれまで見たことないようなヘンな作品が多い。その代表が宮原嵩広の《リキッド・ストーン》だ。これは正方形の大理石板の中央に穴が空き、そこから白いシリコン液が湧き出たり引っ込んだりする作品。前にも藝大で見たことはあるが、以前よりヴァージョンアップしたのか、穴からぷくぷく泡が出たり、ポコッと穴が開いたりする動作がいっそう卑猥で下劣に感じられた。これはエグい。
2013/10/25(金)(村田真)
あいちトリエンナーレ2013 パブリック・プログラム クロージングイベント あいちトリエンナーレ2013に関する「Q&A」
名古屋市美術館 2階 講堂[愛知県]
名古屋市美術館にて、クロージングイベント「あいちトリエンナーレ2013に関するQ&A」を行なう。キュレーター、プロデューサーらがずらりと並び、トリエンナーレでできたこと、できなかったことを語り、質疑を受ける。あいちトリエンナーレ2013の来場者数は微増したが、継続するにあたって気をつけるべきことの質問に対し、あまり数字を気にしすぎないのがいいと答えた。数字が目的化し、これに縛られると、なんのために国際展をやっているのかわからなくなるからだ。アーキテクトの武藤隆が前回との作品数の比較表を制作していた。全体としては微増である。が、長者町は35→16と大幅減に対し、納屋橋の9→14、新規の岡崎の+15で取り返している。もっとも、長者町は前回のトリエンナーレ2010を契機にいろんな店が増え、3年前に比べて、にぎやかさが出たように思う。また長者町からのおもてなしとして木のベンチをあちこちに配したり、アーティストによるカフェ・スペースもつくられた。さらに『あいち建築ガイド』を手に歩けば、いろんな渋ビルも楽しめる。現存せずとされた村野藤吾設計の建物が、実はここにあったことも発見された。作品=図だけではなく、地も楽しむことで、違うかたちでのヴォリュームを感じることができる。そのための手引きは用意した。名古屋市美も作品減だが、これは前回と展示方法を変えること、会場ごとのメリハリをつけることを意図した結果である。青木淳+杉戸洋による試みは、外構も含め、建物全体を作品化すること。他のどの芸術祭でもなされなかった切り口だろう。芸文のさかえ原発と同様、最大級の作品である。作品数ではなく、空間を楽しみたい。
2013/10/25(金)(五十嵐太郎)