artscapeレビュー

エモーショナル・ドローイング

2009年01月15日号

会期:11月18日~12月21日

京都国立近代美術館[京都府]

入館したらちょうど本展を企画した東京国立近代美術館学芸員の保坂氏と、信州大学人文学部准教授の金井氏との対談が始まるところだったので聴いてから会場に入ることにした。見ることや解釈することよりも、感じることのほうを重視するという趣旨のもとに構成された今展の出品作家の説明から、予備校教育の歴史から考察する美大受験用デッサンの傾向とその変遷、ドローイングという言葉の枠組みの問題など、2時間程のトークの話題は幅広く、たいへん興味深い内容だった。その分改めて展示作品を見ていくと、なぜここでこれが「ドローイング」として扱われるのかと考えてしまうものも。全体的には、イメージが言葉と結びついていったり連想が広がる魅力的な展覧会だと思ったが、同時にどこか腑に落ちない消化不良のようなモヤモヤ感が残った。そんな未消化の気分や余韻もあるが、それだけに、今後また同テーマでの新たな展開があるならばぜひ見てみたい。

2008/12/13(土)(酒井千穂)

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