2019年07月15日号
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artscapeレビュー

写真屋・寺山修司

2009年01月15日号

会期:11月19日~2月28日

BLD GALLERY[東京都]

劇団・天井桟敷を率いて、1960~70年代の「アングラ文化」の旗手であった寺山修司は、写真にも異様なほどの執着を見せていた。1973年に「荒木経惟に弟子入り」した寺山は、モデルを公募して『幻想写真館 犬神家の人々』の撮影を開始する。74年に東京、京都などで展覧会を開催し、75年には同名の写真集(読売新聞社)も刊行されたこのシリーズ以後にも、寺山はハンブルグ、ロンドンなどでその続編を撮影し、78年には南仏アルルの国際写真フェスティバルに参加して公開ワークショップをおこなうなど、精力的に活動を続けた。本展は会期を二つに分け(第1期は2008年12月27日まで、第2期は1月9日から)、その多彩なイメージ世界を紹介している。
写真展のカタログも兼ねて出版された『写真屋・寺山修司』(フィルムアート社)に寄せた「寺山修司と写真」で、四方田犬彦は「日本映画史の中で寺山修司は落着きが悪い」と述べる。その言い方を借りれば「日本写真史の中でも寺山修司は落着きが悪い」ということになるだろう。彼の撮影の舞台はすべてキッチュな見世物小屋のような人工空間であり、そこではカメラは徹底して「真を写す」のではなく、「偽を作る」道具として駆使されている。また彼は、できあがった写真そのものよりも、撮り手とモデルとの関係を揺さぶり、エキサイトさせていく撮影行為の方に関心を寄せていたように見える。
荒木経惟、深瀬昌久、沢渡朔のような、同時代に「虚実皮膜」を行き来する作品を作り続けた写真家たちとの影響関係も含めて、「写真屋・寺山修司」の位置づけをもう一度考え直していく契機となる、刺激的な展覧会だった。

2008/12/02(火)(飯沢耕太郎)

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