artscapeレビュー
生活と芸術──アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで
2009年01月15日号
会期:1月24日~4月5日
東京都美術館[東京都]
東京展 東京都美術館 1/24(土)~4/5(日)
19世紀後半にイギリスで生まれたデザイン運動「アーツ&クラフツ」を、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館(V&A)の貴重なコレクションを中心にして、国内外の関連するコレクションも併せて展示する注目の企画展である。昨年の京都国立近代美術館での展示(9/13(土)~11/9(日))を経て、東京に巡回してくる。モリスの仕事を始め「アーツ&クラフツ」運動の模様を原作品と資料で総合的に見ることのできるまたとない機会である。もうひとつの見所は、このデザイン運動が、諸外国にどのように受容され展開したかを見せる部分にある。ヨーロッパ諸国での展開として、オーストリアのウィーン工房、また、ドイツ、ハンガリー、ロシア、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの諸国での連動する動きが紹介されている。アーツ&クラフツの精神に繋がりながらも、それぞれの国の文化の独自性が色濃く出ている模様が鮮明に描かれている。そして、この流れのなかで日本の民芸運動が紹介され、日本の固有性も見えてくる。民芸運動の中心人物、柳宗悦は、民芸運動はアーツ&クラフツの影響下で生まれたのではなく独自の運動であるとの言を残しているが、本展の文脈のなかでは、民芸運動が19世紀から20世紀へという大きなデザイン運動のうねりと共鳴していたことが見事に見えてくる。アメリカでの展開が紹介されていないのは残念であるが、アメリカを入れるとすると膨大な展示物が想像されるので、あえて割愛したのかもしれない。さまざまな発見に満ちた貴重な展覧会である。
公式サイト:http://www.asahi.com/ac/
2008/12/31(水)