artscapeレビュー
Appleの異変 Macworld Expo、Apple CEO スティーブ・ジョブズ不参加
2009年01月15日号
Macworld Expoとは、アップルや関連製品のユーザーやベンダー、会社などが一堂に会するビジネスショーであり、1985年来開催されている。とりわけ、正月明けに開催されてきたサンフランシスコでのエキスポは、Apple関係者 とMac愛好家にとっては、年初の重大イベントであった。ここでAppleの革新的な製品が発表されることも多く、Macユーザーは固唾をのんで開催を楽しみにしてきた。なかでも、Appleのカリスマ、創設者のスティーブ・ジョブズの基調講演は、Appleの革新的な機能とデザインを備えた新製品を話術巧みに紹介する最重要イベントであり、常に注目の的であった。Apple社の参加は今回のExpoで最後となり、さらにスティーブ・ジョブズ(近年、健康状態が良くなかった)が基調講演を行なわないというニュースは、Apple社の株価にも影響するなどさまざまな反響を呼んでいる。20世紀後半から21世紀初頭のプロダクトデザインの歴史という視点から見てみると、Apple社は間違いなく、Macintosh Plus, iMac, iPodなどでその先端を切り開いてきた。ジョブズは、Appleデザインの推進者でもあり、広くデザインの世界にインパクトを与える震源になってきた。ジョブズ不在の事態は、Appleの現在を象徴しているのかもしれない。パソコンはある意味で成熟産業になってきた。真の意味での革新を続けるのは難しい。完成度を高めているMac OSXも、次世代のバージョンについての話題を耳にすることも少なくなった。Macworld Expoで発表された新製品の少なさが如実に物語っている(17インチのMacBookのみである)。それくらいであれば、たしかに、体調の優れないジョブズがわざわざ出てくる必要はないのかもしれない。パソコンという存在自体が、すでに旧世界に属すると感じられ始めているのかもしれない。ポスト・ジョブズの時代に入り、デザインと機能面でAppleの革新は、今後、どのように進むのだろうか。AppleもChangeの時期を迎えている。
2008/12/31(水)