2019年11月01日号
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artscapeレビュー

金魚(鈴木ユキオ)『言葉の先』

2009年01月15日号

会期:2008/12/12~2008/12/14

アサヒ・アートスクエア[東京都]

鈴木ユキオは若いダンサーや振付家からいまもっとも尊敬を集めている存在といって過言ではない。会場を眺め渡しその印象を強くする。今作は、彼を含め4人の舞台。メインは彼のソロ。あっちとこっち、どっちにも行こうとして結果どっちにいくか定まらない、そんな拮抗のスリルが腕、足、首など各所で同時発生する。鈴木の身体に表われていたのは既存のスタイルの洗練を目指す類のダンスとは次元を画する高純度のダンスだった。「あっちへ」と「こっちへ」とが共棲する体は、いつも速すぎて遅すぎる。必然として起こるズレ。不意打ちのリズムは、見ないことを許さない力を観客に感じさせた。 後半、一個の身体内部に宿されていた拮抗は、不意に現われた若い男にどつかれることで、外側との拮抗へとスライドする。こうした展開もよい。ただ、タイトルの「言葉の先」が示す意味合いは終始不明確だった。「か・ら・だ」「か・ん・が・え・る」などと鈴木が自分の身体の現状を自己言及的に呟く。と、鈴木の体と言葉の関係がかたどられはする。とはいえ、観客と鈴木の身体との関係、発せられた言葉との関係は曖昧なままであって、観客は鈴木との関係が生まれる手前で取り残された。彼のダンスほどに、鈴木の発話行為が観客にとって明確なポイント(「先」)を示しえなかったのは残念だった。

2008/12/12(金)(木村覚)

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