2019年09月15日号
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artscapeレビュー

蜷川実花展──地上の花、天上の色

2009年01月15日号

会期:11月1日~12月28日

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

当代きっての人気写真家による大規模な展覧会。トレードマークである目が眩むような原色の写真を撒き散らすように展示して、広い会場を見世物小屋のように仕立て上げ、活気あふれる雰囲気を醸し出していた。若い層を中心に新しい観客の開拓に成功し、同会場の入場者の記録を更新(総入場者数は61,316人)したという。作品の前に人だかりができ、グッズやカタログの売り場には長蛇の列。あまり景気のいい話題が少ない日本の写真界にとっては、久々の朗報といえるのではないだろうか。
これまで蜷川実花といえば、どうしても蜷川幸雄の娘、結婚と出産といった話題が先行し、肝心の作品についてはあまりまともに論じられてこなかったように思う。だが1990年代半ばのデビュー作(初々しいセルフ・ヌード)からまとめて作品を見直すと、彼女が写真作家として着実に力をつけ、自分のスタイルをしっかりと作り上げてきたことがよくわかる。特に最新作の「Noir」のシリーズは注目に値する。これまでも彼女の作品の基調低音となっていたグロテスク志向がより徹底され、派手で陰惨でバロック的なイメージ世界がはっきりと形をとりはじめている。荒木経惟の「エロトス」(エロス+タナトス)の正統的な後継者の地位を、完全に確立したといえるかもしれない。
次に何が出てくるかが非常に楽しみ。エネルギー全開でさらなる高みをめざしていってほしい。

2008/11/15/(水)(飯沢耕太郎)

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