2020年11月15日号
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artscapeレビュー

米田知子「Japanese House」

2011年12月15日号

会期:2011/10/29~2011/12/03

シュウゴアーツ[東京都]

津田直の展示を見てから、hiromiyoshiiの一階下のシュウゴア─ツへ。米田知子の新作は、戦前の日本統治時代に建てられた台北の日本家屋を撮影している。これらの11点の作品は.2010年に台北で開催された「クアンデュ・ビエンナーレ」の出品作である。
蒋介石政権時代の参謀総長、王叔銘将軍の家、太平洋戦争終結時の総理大臣だった鈴木貫太郎の家、台北北部の北投温泉にあった日本家屋などの部屋の内部を、米田は大判カメラで細部まで舐めるように撮影している。これらの家々はすでに住む人がいなくなって打ち棄てられたり、台湾人が住みはじめて改装されたりして、かなり様相が変わってきている。だが建物の部屋の造りや装飾には、明らかに「Japanese House」としての名残りが、遺香のように漂っているのが見えてくる。その微妙な気配を捉えるため、米田は薄い皮膚をそっと引き剥がすように、部屋の表層の連なりを繊細な色調のプリントに置き換えていく。その「歴史の表層化」とでもいうべき作業によって、普通なら見過ごしてしまうような埃や染みや引っ掻き傷のようなものが、見る者の記憶とシンクロし、過去の時間に引き込んでいく重要な要素として浮上してくる。その微妙な手つきは、さらに洗練の度を増してきているように感じた。津田直の展示もそうなのだが、日本の写真家(写真を使うアーティスト)の隙のない細やかなインスタレーションは、ひとつのスタイルとして定着しつつあるのではないだろうか。

2011/11/02(水)(飯沢耕太郎)

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