2020年11月15日号
次回12月1日更新予定

artscapeレビュー

鈴木涼子「私は」

2011年12月15日号

会期:2011/11/18~2011/12/17

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

鈴木涼子の意欲的な作品の展示だ。鈴木はジェンダーやセクシュアリティを問い直すセルフポートレート作品をずっと発表してきたが、「ここまできたのか!」という感慨があった。
180×200センチのかなり大きな作品が9点、120×120センチの作品が1点。どの作品でも筋肉質の男性の裸体に鈴木自身の首(顔)が接続してある。その継ぎ目の画像処理が完璧なので、一見あたりまえの男性ヌード作品のようなのだが、見ているうちにじわじわと違和感がこみ上げてくる。やはり女性の顔と男性の身体とは相性があまりよくないのだ。そのどこかグロテスクでもある気持ちの悪さが、われわれは男性らしさとか女性らしさとかを、いったいどこでどんなふうに認識しているのかという問いかけにつながってくるのだ。
それにしても、鈴木の果敢な実験精神にはいつも驚かされる。彼女は前に過度に女性性を強調したアニメのフィギュアに自分の顔を接続するという「ANIKORA」シリーズを発表した。このときもかなりのインパクトだったのだが、今回の「私は」では男性性器のついた身体と合体している。この「男性性器のついた」というのは比喩的な言い方ではなく、何枚かの作品では実際に男性性器そのものがしっかり見えているのだ。鈴木がそこまで勇気を持って踏み込んでいることに感動する。むろん画像操作上のことだという見方もできるが、この生々しさは尋常ではない。やはり体を張った人体実験に思えるのだ。

2011/11/26(土)(飯沢耕太郎)

2011年12月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ