artscapeレビュー
ひらいゆう「境界─マダムアクション」
2011年12月15日号
会期:2011/11/11~2011/12/11
TOKIO OUT of PLACE[東京都]
東京・広尾のTOKIO OUT of PLACEで、ひらいゆうの展示を見て、その前に資生堂ギャラリーで見たダニヤータ・シン展との間に不思議な暗合を感じた(そういえば、平井は1996年に資生堂ギャラリーで個展をしたことがある)。二人とも女性作家というだけで、キャリアも、活動場所もまったく違っているのだが、複数の写真を組み合わせたり対照させたりして「物語」を浮かび上がらせていく作品の雰囲気が、どこか似通っているのだ。熱を帯びた闇の奥から、何か切迫した感情を引き出そうとする手つきにも、共通性があるように思える。
ひらいの今回の展示は、男の子向けのマッチョなフィギュア「アクションマン」にドレスを着せ、化粧を施して“女装”させた「マダムアクション」と、アイスランドの寒々とした霧や氷の風景を切り取った「BLUEs」のカップリング。この二つのシリーズに直接的な関係はないので、観客は宙吊りにされたように感じてしまうかもしれない。だが、男─女、虚構─現実、生─死といった二分法の「はざま」や「ずれ」にこだわり続けるひらいの写真のあり方は、このような「境界」の領域をさまようことからしか見えてこないだろう。彼女がパリで暮らし始めてからもう10年以上になるが、写真作家としての自信の深まりが、一見強引とも思えるような二つシリーズの混在に、落着きと安定感を与えているように感じた。
2011/11/11(金)(飯沢耕太郎)