2020年11月15日号
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artscapeレビュー

第43回日展

2011年12月15日号

会期:2011/10/28~2011/12/04

国立新美術館[東京都]

霜月の末日を飾るは晩秋恒例「日展」探検。といっても数が多いので日本画と洋画だけよ。それでも合わせて1,091点ある。日本画を漫然と見ていると1点に目が止まった。岩田壮平《白─03・11》。タイトルからも察せられるとおり東日本大震災をモチーフにしたもので、どういう技法か知らないけれど被災地の写真を画面に転写している。画像はモノクロームでしかもネガなので一見なんだろうと思ってしまうが、まぎれもない被災地の風景だ。そう、今年は大変な年だったんだ、と、この作品であらためて気づかされた。そう思ってもういちど見直してみたが、やはりというか残念ながらというか、日本画で直接震災に触れた作品はこれしかなかった。洋画はもう少しあった。ガレキの山を黒いペンで描いた西川誠一《溜まり》と、被災地の風景をバックにカボチャなどの静物を手前に描いた伊勢崎勝人《それでも大地は甦る》。また、渡辺雄彦《取り残された海》は震災とは関係なさそうな室内静物画だが、そこに描かれた舵輪やランプなどは津波に飲み込まれた作者の故郷に残された遺品だという。別に震災や原発事故をテーマにしなければならない義務はないが、しかしまるでそんな出来事などなかったかのようにエキゾチックな異国の情景を描いたり、ロココな衣装を着けた時代錯誤の女性像を描いたり、ましてや東北では壊滅状態に陥った漁村や漁港をのどかに描いた風景画(なぜか日展には多い)を見ていると、怒りを通り越して絶望的な無力感に襲われる。そう、日展とは時代や社会から目をそらせる美の王国であり、そこだけ時間の止まった竜宮城なのだ。

2011/11/30(水)(村田真)

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