artscapeレビュー

山田優アントニ展

2011年12月15日号

会期:2011/11/15~2011/11/26

ギャラリー16 APERTO[京都府]

画面に描かれている人物の姿形はさまざまなのだが、すべて作家自身の記憶、感情、経験を投影した“自画像”だという肖像画が並んでいた。どれもどこか奇妙な印象を受けるもので、得体の知れないと言うと失礼かもしれないが、悪い意味ではなく、むしろ清々しさを覚える不思議な魅力を感じてひっかかった。微妙な顔の表情もさることながら、描かれた洋服、帽子など、中世ヨーロッパを想起させる服装にも違和感がある。透明感が感じられる画面なのだが、近づいてみると絵の具が何度も塗り重ねられ、厚く層を成しているのがわかる。奥行きや色彩の表情が複雑に表われ、視線がつい誘い込まれるようなのだが、モチーフも含め、全体に調和していない雰囲気が気持ちを引き摺らせる作品だ。作家は愛知県立芸術大学の大学院生で、絵を描くようになったのは肖像画家の父の影響が大きいとコメントにあった。そのバックグラウンドからいろいろな想像も広がる。だが、それを知ることは特に重要というわけではない、そんな才気が感じられる作家だった。

2011/11/26(土)(酒井千穂)

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