2020年11月15日号
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artscapeレビュー

稲田智代「パレード」

2011年12月15日号

会期:2011/11/23~2011/12/06

銀座ニコンサロン[東京都]

稲田智代には詩人の才能もあるようだ。会場に掲げられていた「詩」がなかなかよかった。
「パレードがいく/パレードがいく ふたつのあいだを/パレードがいく なにもかもが/ひかってゆれている/はじまりもおわりも/すべてがひとしく/ここに」
どこか大正から昭和初期にかけて書かれた、八木重吉とか大手拓次の詩の趣があるのではないだろうか。そのちょっとノスタルジックな雰囲気は写真にも表われていて、これまた昭和の匂いがするプリントが並んでいた。本人はまったく意識していなかったようだが、1960年代末の田村彰英の初期作品に、こんなふっと消えてしまうような気配を捉えたものがあったような気がする。
会場構成もとてもうまくいっていた。横位置の、水平線が強調された写真(人が本当にパレードのように列を作っている写真もある)が並んでいる間に、プリントをゼムクリップで洗濯物のように吊るしたパートがはさまっている。写真がくるんと丸まっている感じが、風にひるがえっているようでもあり、軽やかな気分を強調している。とはいえ、写真の内容が手放しに明るいものかというと、そうでもない気がする。稲田は建築やインテリア関係の仕事をしていたが、ここ5年ほどは病院で働いている。そのなかで「いくつかの近しいいのちを見送って」きたという。出会いも別れも、生も死も「すべてがひとしく」光に包み込まれてパレードのように続いていく──そんな思いが一枚一枚の写真に投影されているように感じた。写真の紡ぎ手として、ひとつの壁を乗りこえたのではないだろうか。

2011/11/26(土)(飯沢耕太郎)

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