2021年09月15日号
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artscapeレビュー

張照堂写真展 歳月の旅

2015年10月15日号

会期:2015/09/01~2015/10/30

台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター[東京都]

台湾の写真家、張照堂(ジャン・ジャオタン)の写真作品を見る機会が増えてきたのは嬉しいことだ。2014年のzen foto galleryとPlaceMでの個展に続いて、今回は東京・虎ノ門の台湾文化センターで、1970~90年代の代表作を展示する「歳月の旅」展が開催された。2013年9月に台北市立美術館で開催された回顧展「歳月/昭堂」は、「台湾の写真芸術史上においても稀な事件」とされるような大きな反響を巻き起こし、彼の写真に対する評価の高まりは、台湾だけでなく、日本を含むアジア全体に及ぼうとしている。1960年代にそれまでのサロン調の写真一辺倒だった台湾の写真家たちを荒々しく挑発する、身体性の強い「実存主義的な」作品群でデビューした張の存在は、日本でいえば東松照明、奈良原一高、川田喜久治、細江英公ら、VIVOの写真家たち、あるいは中平卓馬、森山大道らの仕事と比較できるのではないだろうか。
さて、今回の写真展を見てあらためて感じたのは、張が「旅」の途上で見た台湾各地(1点だけ中国・甘粛の写真が含まれている)の光景から滲み出てくる孤独感、寂寥感の深さである。張はこの時期には台湾のテレビ局に勤め、ドキュメンタリー番組の制作などで忙しい時期を過ごしていた。これらの写真は、その合間に「アマチュア写真家のように」撮りためられたものだ。だが、そのことが、逆に風景の片隅に寄る辺なくたたずむ人たちに向けられた彼の視線を研ぎ澄まし、純化していったのではないだろうか。違和感や距離感を基調としながら、哀惜を込めた眼差しを人々に注ぐ張の写真は、国籍を超えて見る者の胸を抉る強度に達している。今回は23点という、数的にはやや物足りない展示だったので、ぜひ彼の仕事の全体像を概観できる回顧展を実現してほしいものだ。

2015/09/04(金)(飯沢耕太郎)

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