artscapeレビュー

野火 Fires on the Plain

2015年10月15日号

「野火」は大岡昇平の原作だが、まさに塚本晋也の映画だった。もはや誰が敵なのか不明な日本軍の混乱、極限下に置かれた人間、そして、残酷な自然環境が執拗に描かれる。改めて、なぜいままで日本にこういう「戦争」映画がなかったのか?極限下における人間の行為を描く小林よしのりの新作『卑怯者の島』にも近い態度だが、むしろ塚本は喰うことをめぐる本能的な生存の闘いと人間性の境界に焦点をあてる。

2015/09/06(日)(五十嵐太郎)

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