artscapeレビュー

試写『美術館を手玉にとった男』

2015年10月15日号

最近アート系映画の試写を見る機会が多いが、なかでもこれはイチオシ。自分が描いた名画の贋作をアメリカ各地の美術館に寄贈するという、タイトルどおり「美術館を手玉にとった男」のドキュメンタリー。ある美術館のキュレーターが贋作だと見破って告発したものの、売るんじゃなくて寄贈するんだから罪に問われることなく、ついに個展まで開くことになり、かたちを変えていまなお寄贈しているというウソみたいなホントの話。主人公は見た目も異貌で、仕草や話し方も独特の強烈なキャラクター、ひとことでいえばアウトサイダーなのだ。周囲の者とくに美術関係者はみんな、コピーじゃなくオリジナルを描けばいいのにと善意で忠告するが、本人にしてみればオリジナルなんてなんの意味もないはず。かつて男を告発し、いまなお追跡している元キュレーターも徐々に彼の引力圏に取り込まれ、もはや事件を追及しているのか単なるファンなのか自分でもわからなくなり、とうとう個展に駆けつけて男と対面する……。英語の原題は似ても似つかぬ「Art and Craft」。ホンモノの芸術と芸術もどき、みたいなニュアンスだろうか。「Inside and Outside」でもいいかも。


映画『美術館を手玉にとった男』予告編

2015/09/17(木)(村田真)

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