artscapeレビュー

島尾伸三「二分心 Bicameral Mind」

2015年10月15日号

会期:2015/09/01~2015/09/12

THE WHITE[東京都]

このところ、個展、写真集の刊行(『じくじく』Usiomada)、大学時代の仲間たちとの同人誌『number』の復活展(「Lost “number” Update」THE WHITE、エスパス・ビブリオ)と、島尾伸三の活動に弾みがついている。今回の東京・神田のTHE WHITEでの個展でも、新たな展示の形を試みていた。
60点あまりの写真はいくつかのパートに分けられている。仮に「夜空/空き地」、「ショーウィンドー/商品」、「椅子」、「青い光」、「黄色」、「ゴシックとアールヌーボー」などと名づけることができる写真群である。写真は東京だけでなく、ヨーロッパやアメリカへの旅の途上でも撮影されていて、リスボンの地下鉄の隣にニューヨークの中央駅の写真が、その隣に自宅の写真が並ぶ。つまり、これまで折に触れて撮影してきた写真を、もう一度シャッフルして、テーマごとに再構成しようという試みなのである。
その結果として見えてくるのが「二分心」ということなのだろう。写真家は「思うように撮影が進まない、もがくように困難な時間帯」に落ち込むときがあるが、それでも「そんな時でも私の目玉は景色の中に撮影に値すると思われる空間を見いだしている」のだという。その二つに分けられた目と心の動きを導いている「生命の根源に近い何か」を、写真の再構築を通じて浮かび上がらせようとしているのが今回の試みなのだ。写真を撮るという行為の根元にある「衝動と啓示」を探り当てようというその作業は、まだ始まったばかりのようだが、さらなる展開が期待できそうだ。

2015/09/11(金)(飯沢耕太郎)

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