2021年09月15日号
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artscapeレビュー

生誕100年 写真家・濱谷浩──もしも写真に言葉があるとしたら

2015年10月15日号

会期:2015/09/19~2015/11/15

世田谷美術館[東京都]

1999年の死去から16年あまりを経て、濱谷浩の回顧展が開催された。「モダン東京」「雪国」「裏日本」「戦後昭和」「學藝諸家」の5部構成で、代表作200点が並ぶ。生前制作のプリントを元にして、2015年に再制作された写真だからだろうか。戦前や1950年代の写真群を見ても、奇妙な生々しさを感じる。今回は残念なことに、後期の代表作である1970年代以降に世界各地で撮影された壮大なスケールの風景写真のシリーズは割愛されているのだが、より大きな会場で、この不世出の写真家のより規模の大きな展示を見たいものだ。
今回あらためて強く感じたのは、濱谷の写真家としての実験精神である。1930年代の銀座や浅草のモダンな風俗写真は、明らかに同時代の「新興写真」の影響化にあり、1945年8月15日の正午にカメラを天に向けて写した「終戦の日の太陽」の写真も、その延長上にあると思う。『雪国』(毎日新聞社、1956年)、『裏日本』(新潮社、1957年)でドキュメンタリー写真に転じた後も、画面構成や明暗の処理にはモダニズム時代以来の実験精神が息づいている。『學藝諸家』(岩波書店、1983年)も単なる人物ポートレートの写真集ではない。モデルの個性をどのように表現していくのか、画面の隅々にまでさまざまな工夫が凝らされている。
内容だけではなく、むしろ語り口やフォルムから濱谷の写真を読み解いていく視点が必要になるのではないだろうか。彼の写真表現の「新しさ」に着目すべきだろう。

2015/09/22(火)(飯沢耕太郎)

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