2020年07月01日号
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artscapeレビュー

2013年08月15日号のレビュー/プレビュー

アートがあればII──9人のコレクターによる個人コレクションの場合

会期:2013/07/13~2013/09/23

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

9人のプチコレクターの作品を集めたコレクション展の第2弾。9年前の第1弾のときは、「これはいくらで買ったんだろう」とか「これはあの画廊で買ったんだろう」とかゲスの勘ぐりに終始したもんだ。そもそ個人のプチコレクションを天井の高いホワイトキューブの巨大空間で見せていいわけ? という疑問もあった。でも今回、意外と素直に見られたのは、作品の持つ力ゆえかもしれない。力といっても作品自体が大きくなったわけじゃなく、相変わらず小品が多いのだが、しかし限られた予算のなかから選ばれた作品だけあって、個々に輝いて見えるのだ。そう、ここにあるのはどんなに小さくても、どんなに安くても、金銭トレードで勝ち抜いてきた作品なのだから。

2013/07/26(金)(村田真)

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あいち建築ガイド

発行所:美術出版社

発行日:2013年7月27日

あいちトリエンナーレ2013の公式ガイドブックには、ぽむ企画によるイラスト付き名古屋建築のエッセイを収録したが、これとは別に155件を紹介する『あいち建築ガイド』が刊行された。芸術祭に併せて、建築マップもつくるのは相当大変だったが、あいちならではの試みになった。トリエンナーレで155の作品が増えたと思って、街歩きを楽しんでもらうことが、制作の狙いである。以下に「あいち建築ガイド」の特徴を挙げよう。
第一に、愛知県全域からまんべんなくというよりは、名古屋の中心部と岡崎など、あいちトリエンナーレの会場周辺やオープンアーキテクチャーの物件絡みが詳しくなっていること。したがって、前回と今回の会場になっているまちなかのビル、アート関係の建築などを小まめに拾っている。まちなか展開の作品を巡るとき、この本も持っていると、まわりの一見普通に見えるビルも楽しむことができるだろう。とはいえ、もちろん豊田市美術館などの重要な建築は入っている。第二に、トリエンナーレが記憶をテーマにしていることから、すでに消えた建築も入っていること。例えば、先日見たらもう解体されていた大名古屋ビルヂング、旧国鉄名古屋駅などである。第三に、通常こうした建築ガイドにないインテリア物件も、MESHの会の協力で、多数紹介していること。第四に、東海テレビの街歩きで有名な高井一と五十嵐で建築散歩する対談を巻頭に収録しつつ、また渋ビル、地下街、劇場、結婚式教会、都市計画、ランドスケープなどのコラムを収録したこと。許可がもらえず、泣く泣く掲載できなかった物件も、こちらの文章で触れることになった。最後に本書の序文を引用しよう。トリエンナーレが終わっても、「建築は存在し続けている。まちなかはミュージアムなのだから。そう、建築を楽しめるスキルを身につけると、まちなかは終わらない展覧会として、いつも目の前に広がっている」。

2013/07/26(金)(五十嵐太郎)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2013年度春学期学内講評会

東北大学片平キャンパスKatahiraX[宮城県]

東北大学にて、せんだいスクール・オブ・デザインの学内発表会を行なう。今回の「演劇/ライブから考える」をテーマにした『S-meme』6号は、チラシの束が乱雑に束ねられたような装幀である。限られたコストで、なるべくカオティックに見せるためには、実はかなり周到に事前の設計が必要なのだが、表面的にはそうしたプロセスはあらわれない。見るものが、それを読み解けるか。またクリエイター・イン・レジデンスでは、スタジオ・ヴェロシティの《瞬間を閉じ込める椅子》を、受講生がどう制作したかのメイキングを詳しく紹介する。当然、タイトル通り、瞬間的にできるものではなく、かなり手がかかるものだ。この椅子は、あいちトリエンナーレにおいて、岡崎市のシビコ屋上で展示される。

2013/07/26(金)(五十嵐太郎)

高橋匡太「ぼくとひかりと夏休み」

会期:2013/07/20~2013/08/18

豊田市美術館[愛知県]

豊田市美術館で夏休み期間中開催されている高橋匡太のワークショッププロジェクト「ぼくとひかりと夏休み」。色とりどりに光が変化する照明の空間に用意された大量の粘土で、会場を訪れた子ども達が自由に遊び、日々会場の様子も変化していく。そのありさまを記録した編集映像が毎日更新され公開されているのだが、それも見ているとクレイアニメーションのようでなかなか楽しい。私が訪れた日は、粘土で巨大なロールケーキか巻き寿司のような立体を参加者がみんなで制作し、展示してみるという「ねんどとひかりのウルトラ・ワークショップ」が開催され、多くの親子で賑わっていた。意外にもねん土が固そうで、「たたく、のばす」といった作業に誰もが苦戦していた感のあるワークショップだったが、子ども達とアーティストの高橋のやり取りや一所懸命な姿が微笑ましかった。同館では「フランシス・ベーコン」展も同時開催中。こちらは9月1日まで。


7月27日のウルトラ・ワークショップ準備中の会場

2013/07/27(土)(酒井千穂)

曽谷朝絵「宙色(そらいろ)」

会期:2013/07/27~2013/10/27

水戸芸術館[茨城県]

虹色に輝くバスタブや水滴をはらんだガラス窓など、光あふれる光景を描いてきた曽谷の大規模な個展。初めのほうの展示室では清冽なタブローが並び、途中には色とりどりのシートを波紋状に切り抜いて壁や床に貼ったインスタレーションの部屋もある。圧巻は、天井から吊るした鏡の球体にアニメーションを投影し、展示室全体に色彩を反映させた新作の映像インスタレーション《宙》。ひととおり見て歩くと、虹色の絵画に始まり、着色シートを切り抜いて貼ったインスタレーションに移行し、アニメによる映像インスタレーションに到達したことがわかる。平面(2次元)→立体(3次元)→映像(時間)と一歩ずつ着実に進歩しているし、そのチャレンジングな姿勢には感心するが、しかし映像だけ見ると、どこかで見たようなありふれたイメージのように感じてしまう。唯一無二のイメージを確立した絵画に比べ、映像だとだれでもできそうに思えてしまうのだ。言い換えれば、それだけ絵画で光を表わすのが難しく、だからこそ価値があったのであって、最初から光である映像で光を表現しても珍しくないということだ。もちろん彼女自身そんなことは百も承知で、いまさら映像に転向するつもりはないだろうし、あいかわらず絵も描き続けている。とくに最近の絵はこれまでと違った方向性を感じさせ、期待がもてる。

2013/07/27(土)(村田真)

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2013年08月15日号の
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