2020年04月01日号
次回4月15日更新予定

artscapeレビュー

2013年08月15日号のレビュー/プレビュー

ゴッホ展 空白のパリ時代を追う

会期:2013/05/26~2013/07/15

宮城県美術館[宮城県]

宮城県美術館のゴッホ展へ。あまり知られていないが、作風の転換上は重要だった空白のパリ時代とされる作品を、最新の研究成果をもとに紹介する切り口が目新しい。この頃、彼は描く対象をどうするのかという題材の選択から、さまざまな絵画形式の実験という近代的な方法論に移行していく。また常設で特集展示された菅野聖子がよかった。仙台生まれで具体に参加した画家である。手描きによるクールな幾何学絵画がとてもカッコいい。

2013/07/05(金)(五十嵐太郎)

ジェレミー・ディッキンソン展

会期:2013/06/19~2013/07/08

8/アートギャラリー/トミオコヤマギャラリー[東京都]

自動車を並べたり積み上げたりした絵。車体の塗料がはげてたりプロポーションがずんぐりしてるため、ミニカーを描いたものだとわかる。もちろん描写力があるからミニカーだとわかるのであって、ヘタな画家が描いたら本物の車と区別がつかないかもしれない。おもしろいのは、色とりどりの積み木をぴったりはめ込んだ隙間にミニカーを挿入した絵。モンドリアンの幾何学的抽象画を彷彿させる。聞くところによると、彼は子どものころからミニカーを集めていて、現在5,000台くらい持っているという。子どものころからの趣味をそのまま引き継いで好きな絵に描いて(しかも売れて)る……男にとって最高の人生だ(か?)。

2013/07/06(土)(村田真)

二代目はクリスチャン

会期:2013/07/05~2013/07/07

北とぴあ・つつじホール[東京都]

王子にて、つかこうへいの『二代目はクリスチャン』を観劇した。基本的にはリズミカルで、明るく、キラキラした80年代の空気感を思い出させるのだが、だいぶ前に見たお気楽なイメージで記憶している映画版に比べて、戦争の記憶、差別の問題、親殺しなど、独特の暗さを抱えている。劇中で流れる中森明菜やラッツ&スターなどの歌謡曲が懐かしい。一方、舞台美術はほぼゼロで、照明だけで演出していたのは興味深い。同日に上演された『道化師の歌が聴こえる』は、壁に囲まれた街という設定は面白そうだったが、物語の展開をみると、90分もやる内容なのかと疑問に思った。この展開なら30分くらいでおさまるのではないか。あと、ベタにサティの曲を流すだけでの演出も、個人的にはきつい。

2013/07/06(土)(五十嵐太郎)

飛鳥山公園、音無親水公園

[東京都]

王子の飛鳥山公園には、3つの博物館が並んでいる。また渋沢栄一の青淵文庫は小さいながら、なかなか存在感がある近代建築だ。そして音無親水公園は、小さな水車などを組み込み、ちょっとテーマパーク的な昔風の演出によって、「美しい」空間づくりを行なう。一応、表彰もされているみたいだが、歴史を尊重したというよりは、何か別のモノになっている。拙著『美しい都市・醜い都市』で論じたように、大きな疑問を感じる景観だ。

上:《青淵文庫》
下:《音無親水公園》

2013/07/06(土)(五十嵐太郎)

MuDA 山男

会期:2013/07/07

滋賀県栗東市金勝井上「こんこん山」[滋賀県]

ダンサーで振付家のQUICK、作曲家の山中透、美術家の井上信太ら、異ジャンルのソリスト達が集まり、2010年に結成されたアーティスト集団、MuDA。生命、身体、負荷、儀式、宇宙をテーマに、これまで、活動拠点である京都をはじめ、大阪、東京、鳥取、福岡などでもダンス、音楽、映像、美術を駆使したパフォーマンス公演を行なっている。私自身は昨年大阪での公演『MuDA 菌』を見たのが初めてだったのだが、トレーニングのような反復運動を舞台で繰り返し、ダンサー同士が身体をぶつけ合うその独特のテイストは、それまで抱いていたダンスのイメージとも異なるもので、正直に言うとよくわからないという消化不良の感もあった。しかしエネルギッシュなダンサー達の動き、リズミックな音響と舞台美術のイメージもインパクトが強烈だった公演。機会があればまた見たいと思っていた。今回の『MuDA 山男』の舞台は栗東市にある通称「こんこん山」。夜の野外公演という点にも興味がそそられた。昼間に同地で開催されていた竹や瓢箪、森で拾った木の枝などを用いた楽器やオブジェ作りのワークショップにはおもに地元の子ども達が参加していたのだが、なかには鳥取での公演を見て以来MuDAのファンになり、はるばるこのために夜行バスでやってきたという若者達も。最寄りのバス停からもかなり遠く不便な会場だったのだが、夕方の公演にはボランティアスタッフによるシャトルバスの送迎もあり、開演前には続々と観客が集まって一気に賑やかになった。日も暮れかけたころ、妖精か妖怪のようなイメージの着ぐるみを着た2人とひとりの女性ダンサーが登場して開演。その後、うっそうとした林の中から、ほぼ全裸で全身に木の年輪のボディペインティングという出で立ちの6名の「山男」(ダンサー)達が現われ、大きな焚き火の前でダンスパフォーマンスを繰り広げた。やはり反復運動が中心なのだが、激しい動作も呼吸か鼓動のように規則的で、今回は見ているうちに徐々にそのリズムに引き込まれてしまった。中盤には本物の木を「山男」達が切り倒すというパフォーマンスも。揺らめく焚き火の光、音響、山の舞台など、どの要素もその世界観を効果的に見せていた公演。迫力もさることながら、輪廻転生、自然界の壮大な時間、シャーマニズムなど、インスピレーションを刺激する詩的な趣きが素晴らしかった。


公演『MuDA山男』会場の「こんこん山」入口

2013/07/07(日)(酒井千穂)

2013年08月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ