2020年04月01日号
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artscapeレビュー

2013年08月15日号のレビュー/プレビュー

〈遊ぶ〉シュルレアリスム──不思議な出会いが人生を変える

会期:2013/07/09~2013/08/25

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

生誕160年を記念して某文化センターでゴッホの連続講座を開き、その最終回として《ひまわり》を見るため損保ジャパンの美術館を訪れた。だから「シュルレアリスム展」はついでに見ただけなんで印象が薄いなあ。大ざっぱにいえば、シュルレアリスムは夢や無意識など非合理の世界に分け入ったため、恐怖やグロテスク感を呼び覚ます一方で、笑いを誘うユーモアのある作品も見られる。今回は後者のほうがメインになっているように感じた。デュシャン、マン・レイ、エルンスト、ダリといった中心画家より、ドロテア・タニング、トワイアン、ウィルフレド・ラム、ヴィクトル・ブローネルといった周縁画家に佳作が多い。

2013/07/09(火)(村田真)

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村上誠「水迎え 南島の“死”の光景」

会期:2013/07/03~2013/07/16

銀座ニコンサロン[東京都]

銀座と新宿のニコンサロンは、なかなか油断できない写真展の会場だ。その大部分は、やや型にはまったスナップ/ドキュメンタリー系の作品展示なのだが、時折思いがけない写真の仕事を見ることができる。今回銀座ニコンサロンで開催された村上誠の「水迎え 南島の“死”の光景」も、そんな驚きを与えてくれる写真展だった。
村上が撮影しているのは宮古諸島や多々良島など、南島の森や洞窟の奥に潜む死の気配が色濃く漂う場所の光景だ。この種の写真は、どこかおどろおどろしいスペクタクル性を強調したものになりがちだが、村上はあくまでも控えめで、慎ましやかな態度で被写体に接している。かといって記録的な描写に徹しているわけではなく、そこには彼が「見たい」と欲したものが、きちんと写り込んでいるように感じる。それこそが「水迎え」、すなわち「水の流れる足元、地面の下の方で紡ぎ出されていた……“死の影”」を捉えようとする営みにほかならない。ニコライ・ネフスキーの『月と不死』のなかにある「死水」の物語に触発されたその探求の成果は、会場に展示された16点の大判カラープリントにしっかりと写り込んでいるのではないだろうか。
村上は本来写真家ではなく、美術教育に携わりながら、1988〜2003年に「天地[あまつち]耕作」というアートプロジェクトを立ち上げ、大地との交感に根ざした作品を発表してきたアーティストだ。彼のような、異なる領域から越境してきた人の写真の仕事は逆に面白い。より挑発的で刺激的なものになっていく可能性を感じる。

2013/07/10(水)(飯沢耕太郎)

芦田尚美「ポケット」

会期:2013/06/22~2013/07/13

TOMIO KOYAMA GALLERY KYOTO[京都府]

元染工場だった建物を改築したビルに2008年にオープンした小山登美夫ギャラリー京都とタカ・イシイギャラリーがこの7月で閉廊。これまでそれぞれに関西のアートシーンに新風を吹き込む展覧会を開催してきたギャラリーだった。小山登美夫ギャラリーで最後に開催されていたのは芦田尚美の個展。以前から同ギャラリーやショップで陶磁器の作品を発表していた芦田だが、今展では山並みの風景が描かれた代表的な器「AMETSUCHI」シリーズのほか量産のお菓子などの箱をモチーフにしたオブジェ、小さな人形のインスタレーションなど、これまでの作風ともイメージの異なる作品が多数展示されていた。優しく可愛らしい雰囲気の食器類にはもはや多くのファンがいるだろうが、そのたおやかさとも違う、ダイナミックで尖った印象の作品が意外で新鮮だった個展。親しみやすさと心躍るような刺激がないまぜの空間が素敵だった。

2013/07/11(木)(酒井千穂)

石川真生「沖縄芝居 仲田幸子一行物語/港町エレジー」

会期:2013/06/15~2013/08/11

nap gallery[東京都]

沖縄の”女傑”、石川真生の数ある作品のなかでも、「港町エレジー」は特に好きなシリーズのひとつだ。1983~86年、港に近い飲み屋に夜ごとたむろする中年男たちを撮影したシリーズだが、彼女の被写体との絶妙な距離のとり方が見事に発揮されている。最近新たな編集で刊行された『熱き日々inオキナワ』(フォイル)でもそうなのだが、石川は流動し、沸騰する時空のただなかに身を置きながらも、そこに完全に没入することなく、ある意味冷静に状況を見つめ、シャッターを切っていく。「港町エレジー」に登場する酔っぱらいの男たちの、どうしようもないふるまいを許容しつつも、写真の被写体としての可能性をしっかりと値踏みしているのだ。こういう写真シリーズは、石川真生以外にはまず撮れないだろう。
同時に展示されていた「沖縄芝居 仲田幸子一行物語」は、歌あり笑いあり涙ありの庶民のエンターテインメントの一座を率いる仲田幸子を、1977~91年にかけて、14年あまりも追いかけた労作。男性に対する、したたかで容赦のない眼差しが、女性を中心にしたこのシリーズでは少し和らいでいるように感じる。沖縄の人々への愛着と共感が、切ないほどに伝わってくることには変わりはないのだが。
なお、本展はnap galleryで不定期で開催されている「ヴィンテージ・プリント展」の3回目にあたる。今回は撮影と同時期にプリントされた印画が、40点あまりも並んでいた(100点以上のファイルから厳選)。たしかにその時代の空気感が、生々しく写り込んでいるように感じる。

2013/07/11(木)(飯沢耕太郎)

あいちトリエンナーレ2013 東京記者会見

建築会館1階 建築会館ホール[東京都]

東京の建築会館を使い、あいちトリエンナーレ2013の記者発表を行なう。やはり、企画途中の昨年や今年の初めの頃に比べて、プログラムが確定したり、コンテンツができはじめると、説明しやすい。今回の特徴は、震災以降という象徴的なテーマ性と、建築/空間的な視点の二本柱と言えるだろう。出品作家からは、青木淳が名古屋市美の空間をどう読み、杉戸洋らの作家との協同作業でどう変えていくかを、また奈良美智がWE-LOWSというユニットとして長者町でどのような場をつくるかを語る。ともに震災経験に触れたが、これを契機に大事な仲間と共有できる場の大切さを再認識したと述べたのが印象的だった。なお、この記者発表の後、青木も杉戸とともに、スパイダースというユニットを結成した。

2013/07/11(木)(五十嵐太郎)

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