2021年12月01日号
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artscapeレビュー

2012年03月15日号のレビュー/プレビュー

水田寛・オープンスタジオ

会期:2012/02/10~2012/02/12

桂スタジオ[京都府]

「うんとこスタジオ」を出て「桂スタジオ」へ。こちらも京都市立芸術大学卒の作家達が共同で運営しているアトリエスペース。今年は絵画作品を制作している水田寛ひとりだけが制作現場を公開していた。昨年見せてもらった作品とはまた異なる雰囲気の作品が並んでいたのだが、視覚情報と自分自身の感覚が混じり合う「見る」という体験の曖昧で不確かな性質にアプローチしながら、新たな作品制作の閃きを次々と実践し、公開する水田の姿勢も清々しく頼もしく感じられた。次回の発表がいつも楽しみになるアーティストの一人だ。

2012/02/12(日)(酒井千穂)

松井冬子 展──世界中の子と友達になれる

会期:2011/12/17~2012/03/18

横浜美術館[神奈川県]

横浜美術館では毎年のように30代前後の若手作家の個展を開いているが、いつも気がかりなのは広い会場が埋められるかどうかということ。たかだかキャリア10年程度で人さまにお見せできる作品がどれだけあるのか、横浜美術館の大空間に耐えうる作品がどれほどつくれるのか、疑問に思わないでもない。実際だれとはいわないが、展示室を進むにつれ作品が間延びし、最後はかろうじて埋めました的なツライ展示もあった。とりわけ今回は日本画で、しかも寡作といわれる松井冬子だけに、スカスカにならないか心配だったが、杞憂に終わりましたね。しかも一作一作かなり入魂の様子で、展覧会全体に異様な緊張感がみなぎっている。さすが松井さん、伊達ではありませんね。でも、作品のほとんどがモノクロームに近く、テーマやモチーフにも幅がない(よくいえばブレない)ため、見終わったあと、たくさんの作品を見たとか、いろんな作品を見たという印象が薄い。ある意味、全体でひとつの作品みたいな。それはそれでスゴイが。

2012/02/13(月)(村田真)

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ヘレン・ファン・ミーネ「Dogs and Girls」

会期:2012/02/10~2012/03/31

GALLERY KOYANAGI[東京都]

ヘレン・ファン・ミーネは1972年生まれのオランダの女性写真家。1990年代半ばに、魔物に取り憑かれたような、やや畸形的な少女のポートレートを発表して広く知られるようになった。日本でも何度か個展を開催している。
今回のシリーズでは、タイトルのとおり「犬と少女」のカップリングを試みている。犬たちは古風なカーペットの上でポーズをとる愛玩犬で、まさにオーソドックスな「犬のポートレート」として撮影されている。少女たちの方は、いかにもファン・ミーネの好みの蝋人形のような静謐な雰囲気を醸し出しているが、これもまた撮り方としてはやや古風なものだ。だが、「犬と少女」が組み合わされたときに(ほかにウサギとニワトリの写真も1点ずつある)、そこに魔術的な暗合が生じてくるように感じる。隣り合ったイメージにとりたてて関連性はないのだが、少女たちだけのシリーズを見るときよりも、禍々しさ、猛々しさが強まっているように感じられるのだ。少女のなかに潜んでいた動物的なエロスが、犬の存在によって触発されるのかもしれない。犬の写真を大きめに、少女の写真を小さめにプリントした展示も効果的だった。ファン・ミーネの作品世界において、この試みが単なるエピソードになるのか、それともこれから大きく育っていくのかはわからないが、今後の展開を注意深く見守っていきたい作家のひとりであることは間違いない。

2012/02/14(火)(飯沢耕太郎)

畑直幸「Pelletron new no.4」

会期:2012/02/06~2012/02/23

ガーディアン・ガーデン[東京都]

畑直幸はかなり面白い経歴の持ち主だ。プロの美容師として活動しながら写真を撮り始め、ホンマタカシのワークショップで学ぶ。2011年に第4回「1_WALL」でグランプリを受賞したのをきっかけに、本格的に写真家として作品を発表し始め、現在はオランダのアート・スクールに留学中である。こういう横道からひょいと飛び込んでくる者の方が、面白い仕事をすることが多い。畑も将来的には多いに期待できそうだ。
だが、ガーディアン・ガーデンでの「1_WALL」受賞作品展を見る限り、その才能をまだ活かしきれていないように感じた。「中性子核データ測定」のための加速装置、特にそのうねり、もつれ合い、絡み合うコード群を撮影するというアイディアは悪くないし、画像の処理も的確だ。だが、それが会場内に展示されている様子を見ると、うまくまとめようという意識が強く出過ぎているように感じてしまう。コードやチューブの現物を写真とともに配置したインスタレーションも、予測の範囲に留まっていて、かえって小綺麗にまとまっているように見える。一度センスのよさをかなぐり捨てて、もっと極端な方向に走ってもらいたい。さもないと「悪くない」という範囲におさまってしまうのではないだろうか。幸いなことに、オランダという環境は彼自身を大きく成長させる可能性を持っていると思う。むしろ、ヨーロッパのギャラリーや美術館に、日本人の写真家として認められるような活躍をしてほしい。

2012/02/14(火)(飯沢耕太郎)

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猪苗代町立猪苗代小学校

猪苗代町立猪苗代小学校[福島県]

青島裕之が設計した猪苗代町立猪苗代小学校を見学した。南面教室と北側廊下という通常のセオリーとは逆に、南側にオープンスペース、安定した光の注ぐ北側に教室を配置した意欲作である。トップライトや断面の形状を工夫し、北国ならではの採光を巧く処理している。またランチルームとそれに隣接する図書室を全体の中心に置き、共同体の統一感をあらわす。東日本大震災の直後は、地元の住人が一時避難し、公共施設として活躍している。

2012/02/14(火)(五十嵐太郎)

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