artscapeレビュー

2013年04月15日号のレビュー/プレビュー

第66回日本アンデパンダン展

会期:2013/03/20~2013/04/01

国立新美術館[東京都]

うちの庭が騒がしいと思ったら、下界では「六本木アートナイト」が始まったらしい。ちょっとのぞいてみるかと足を向けたのは、本日に限り入場無料の国立新美術館。セコ! まずは敗戦直後から続く日本アンデパンダン展。アンデパンダンだからある程度ヘタな作品が並んでいるのは想定内だったが、ものすごくヘタな作品もあったのは想定外の喜びだった。どんなヘタな絵でも国立美術館に飾れることを証明してくれたんだから、絵描きに勇気を与える展覧会だ。ハッとするような作品もあった。しんぶん赤旗に掲載された風景のスケッチ数点を拡大コピーして額に入れたり、川越の古い蔵やカメルーンの人たちの顔のスケッチをボードに貼ったり、こんな「作品」があっていいんだろうかとハッとした。また今回はネット世代も採り込もうってわけか、入口で黄色い「いいね!」シールを配り、いいねと思った作品の脇に貼ってもらうことも試みていた。もちろん作品によって多い少ないはあるものの、ざっと見たところシールゼロというのはなかったな。ついでに「ヘタね!」シールもやってみればよかったのに。

2013/03/23(土)(村田真)

カリフォルニア・デザイン1930-1965──モダン・リヴィングの起源

会期:2013/03/20~2013/06/03

国立新美術館[東京都]

今日は無料だからつい入っちゃったけど、デザインに興味はないんで足早にグルッと一周する。あ、おもしろいじゃん。作品はほとんど見なかったんでなにもいえませんが、会場構成がおもしろい。観客はまず展示室の壁に沿って大きく一周し、次いで内側にしつらえた仮設壁に沿ってもう一周するという動線。肝腎の作品は仮設壁にのみ展示され、部屋の内壁には1点も飾られていない。おまけに中央部分が広場のように空き、そこから全体が見渡せるという会場構成なのだ。これは展覧会場(エキジビション)というより展示場(エクスポジション)に近い。

2013/03/23(土)(村田真)

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六本木アートナイト2013

会期:2013/03/23~2013/03/24

六本木界隈[東京都]

国立新美術館から東京ミッドタウン、六本木ヒルズと回ったが、とくに収穫もないので家に帰ろうと交差点に向かったら、アマンドのビルの4階でもなにかやってるというので寄ってみた。北沢潤の《サンセルフホテル──六本木ショールーム》だった。「サンセルフホテル」というのは取手市の団地を舞台に、太陽光エネルギーを利用して団地の空き部屋を客室に変えていこうというプロジェクト。ここはそのプレゼン用のショールームというわけだ。部屋の中央に天井いっぱいの照明バルーンが置かれているが、その明かりは昼に貯めた太陽光エネルギーで賄われているそうだ。目の前の首都高から見たら(地上からは見えない)六本木のど真ん中でなにやってんだと思うだろう。アマンドの入ったビルの一室というミスマッチなロケーションも含め、今夜はこれがいちばん納得できる作品(?)だった。

2013/03/23(土)(村田真)

宮崎学「自然の鉛筆」

会期:2013/01/13~2013/04/14

IZU PHOTO MUSEUM[静岡県]

先日、長野県安曇野市の田淵行男記念館で、自然写真の分野の優秀作に与えられる第4回田淵行男賞の審査会があった。宮崎学、海野和男、水越武といった面々と一緒に審査をしたのだが、彼らが異口同音に語っていたのは、デジタル化によって技術的なレベルは上がっているが、写真制作を支える思想や哲学といったバックボーンの形成においては、まだまだということだった。今回IZU PHOTO MUSEUMで開催された宮崎学の「自然の鉛筆」展を見て、たしかにそのとおりであることが納得できた。田淵行男賞に応募してくるアマチュア写真家など及びもつかない強靭な精神力と粘り強さで、ひとつのシリーズを仕上げていく力業は、海野や水越も含めたこの世代の自然写真家の特質と言えるのではないだろうか。
「自然の鉛筆」展には、土門拳賞を受賞した代表作「フクロウ」(1988年~)をはじめとして、自動シャッターが切れるリモコンカメラを駆使した「けもの道」(1976年~)、動物の死骸が土に還っていく様を定点撮影で写しとめた「死」(1993年~)、都市の環境に同化していく生きものたちを追った「アニマル黙示録+イマドキの野生動物」(1992年~)、地元の長野県伊那谷の丘の上に立つ一本の木を撮影し続けた「柿の木」(1991~92年)など、代表作約130点が展示されていた。それらの写真を見ていると、宮崎の写真を貫くキーワードが「循環」であることがわかる。動物や植物たちの世界は、互いに結びつきつつ変化し、そのプロセスを繰り返していく。「死体から毛をあつめて巣をつくるシジュウカラ」(2002年)の連作を見ると、死骸が新たな生命を産み落とす巣づくりに利用され、再生を促していることがはっきりと見えてくる。その生と死の循環のリズムこそが、彼の写真の基調低音となっているのだ。

2013/03/23(土)(飯沢耕太郎)

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「オープン・アーキテクチャー」プレイベント

[愛知県]

あいちトリエンナーレ2013の企画発表の翌日、名古屋にてオープン・アーキテクチャーの予行演習となるプレイベントを行なう。最初に吉村昭範+吉村真基/D.I.G Architectsの自邸兼オフィスを訪問した。サイディングの反転、螺旋状のスキップフロア、チムニーとしての中心吹抜けなどが面白い。午後は1932年に竣工した名古屋陶磁会館である。ここの事務局と店子からの解説は、この建物がどう使われ、どう愛されているかがよくわかるものだった。締めくくりは、女性二人組による名古屋渋ビル研究会の発表である。ポストモダン以前の60、70年代の渋いビルを愛でるもの。角丸や連続窓、アゴ庇などの開口+タイル+昭和的フォントのサインなど、ファサードの特徴からキャラ化する。

写真:左上・右上=D.I.G architects《The Garden 覚王山》、左下=鷹栖一英《名古屋陶磁会館》、右下=名古屋渋ビル手帖

2013/03/23(土)(五十嵐太郎)

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